日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-43
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ポスター発表
卵母細胞由来成長因子がブタ卵母細胞の体外発育と卵母細胞−卵丘細胞複合体の発達に及ぼす影響
*森川 莉帆李 智博宮野 隆
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抄録

【背景】胞状卵胞内で卵母細胞は,周囲を取り囲む卵丘細胞と相互に作用し合いながら発育する。卵母細胞はGDF9とBMP15を分泌し,卵丘細胞を制御すると考えられている。本研究では,ブタ卵母細胞におけるGDF9BMP15 mRNAの発現を調べるとともに,発育途上の卵母細胞を含む卵母細胞−卵丘細胞複合体(OCC)を培養し,卵母細胞の発育とOCCの発達に及ぼすGDF9とBMP15の影響を調べた。【方法】直径1.2~1.5 mmの初期胞状卵胞と直径4~6 mmの胞状卵胞から採取した卵母細胞と卵丘細胞におけるGDF9BMP15 mRNAの発現を調べた。また,初期胞状卵胞から採取したOCCをGDF9とBMP15(0,10,50および100 ng/mL)を添加した培養液中で5日間発育培養し,OCCの直径,卵母細胞の直径および核相の変化を調べた。発育培養後のOCCを成熟培養し,卵母細胞の成熟能力を比較した。【結果】初期胞状卵胞と胞状卵胞の卵母細胞には,GDF9BMP15 mRNAの発現が認められ,mRNAの発現はともに初期胞状卵胞の卵母細胞で高かった。卵丘細胞には,GDF9BMP15 mRNAの発現はほとんど検出されなかった。OCCを発育培養すると,GDF9はOCCの直径を濃度依存的に増加させたが,BMP15では濃度依存的な直径の増加は認められなかった。発育培養後,卵母細胞の直径と核相はいずれの区においても体内で発育を完了した卵母細胞と同様な状態へと変化した。発育培養後のOCCを成熟培養すると,無添加区とGDF9区では,卵丘の膨潤化の程度は低く,卵母細胞は卵核胞期のままであった。一方,BMP15区では卵丘は膨潤化し,卵母細胞は高率に第二減数分裂中期へと成熟した。【結論】ブタの初期胞状卵胞において,GDF9BMP15 mRNAは主に卵母細胞で発現し,卵胞の発達と共にその発現量は減少した。また,卵母細胞の発育過程において,GDF9は卵丘細胞の増殖を促進し,BMP15は卵母細胞の成熟能力の獲得を促すことが示唆された。

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© 2019 日本繁殖生物学会
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