日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-21
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卵巣
ゲノムワイド遺伝子発現とヒストン修飾の統合解析による黄体化メカニズムの解明
*白蓋 雄一郎田村 功清水 奈都子田中 結美子高木 遥香三原 由実子品川 征大前川 亮竹谷 俊明田村 博史杉野 法広
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抄録

【背景】LHサージによる顆粒膜細胞(GCs)の黄体化過程では劇的な細胞の機能的変化が起こる。そこで,黄体化における遺伝子発現とヒストン修飾の経時的変化をゲノムワイドに調べた。【方法】3週齢マウスにeCG 4 IU投与,48 h後にhCG 5 IU投与前,投与後4 h,12 hのGCsを回収した。RNAシークエンスとH3K4me3のChIPシークエンスを行った。【結果】 4 hで発現増加した遺伝子は2077遺伝子,減少した遺伝子は1728遺伝子であった。4 hから12 hで発現増加した遺伝子は1494遺伝子,減少した遺伝子は1778遺伝子であった。H3K4me3が4 hで増加した領域は6223領域,減少した領域は3999領域,4 hから12 hで増加した領域は3228領域,減少した領域は6563領域であった。mRNA発現変化とH3K4me3変化のパターンが一致する遺伝子群について,それぞれgene ontology解析,pathway解析を行った。①H3K4me3とmRNA発現が4 hで増加した後,12 hまで変化しない遺伝子は細胞の形態制御に関与していた。②4 hで減少した後12 hまで変化しない遺伝子は細胞の成長抑制に関与していた。この2群の結果から,黄体化GCsの形態やサイズの増大にH3K4me3による発現制御が関与していたことがわかった。③4 hで増加した後12 hで減少した遺伝子はステロイドホルモン合成に関与していた。④4 hで変化せず12 hで増加した遺伝子は酸化ストレスへの反応に関与し,酸化ストレス防御にH3K4me3による発現制御が関与していた。⑤4 hで変化せず12 hで減少した遺伝子はエンドサイトーシスに関与していた。⑥4 hで減少した後,12 hで増加した遺伝子は代謝やオートファジーに関与していた。H3K4me3による発現制御が代謝を調節し,GCsの分化に関与すると考えられた。【結論】顆粒膜細胞の黄体化過程において,ヒストン修飾変化は遺伝子発現をゲノムワイドに制御し,細胞機能を調節することで黄体化に寄与することが示された。

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