日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-86
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性周期・妊娠
ウマ子宮内膜のprostaglandin F2alpha (PGF)分泌調節における自己増幅機構の存在
*徳山 翔太香西 圭輔登石 裕子角田 修男田谷 一善阪谷 美樹高橋 昌志南保 泰雄奥田 潔
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抄録

【目的】哺乳類において子宮で産生されるPGFは主要な黄体退行因子である。最近,私達はウシ子宮内膜においてPGFがPGF産生を自己増幅的に促進することを報告した。ウマでは,ウシと比較し少量のPGF投与でも黄体が退行することから,我々はウマ子宮にPGF自己増幅機構が存在しているという仮説を立て,この仮説を証明するため以下の実験を行った。【方法】1)中期黄体を有するウマにPGF類縁体のEstrumate (d,l-cloprostenol: 250 mcg/ml)を1 ml投与した。投与から3日目まで定期的に採血し,血液中progesterone (P4)濃度および血清中PGF metabolite (PGFM)濃度を測定した。2)発情周期を通じた子宮内膜組織におけるPGF receptor (FPr) mRNA発現量を調べた。3)子宮内膜組織および上皮細胞,間質細胞にPGF (0.1 μM)およびPGF合成酵素阻害剤のindomethacin (Indo: 10 μM)を単独または組み合わせて添加し2時間培養した。組織片および細胞を洗浄後,培養液を交換し,2時間培養後の培養上清中PGF濃度を測定した。4)子宮内膜上皮細胞および間質細胞にPGF (0.1 μM)を添加し4時間培養後,上皮細胞および間質細胞におけるPGF関連遺伝子発現量を調べた。【結果】1)血液中P4濃度はEstrumate投与2時間後に半減し,投与24時間後で約1/10量まで減少した。血清中PGFM濃度はEstrumate投与45分後に一過性の上昇を示し,投与16時間以降はピークよりも高い値を示し続けた。2)黄体後期の子宮内膜組織のFPr mRNA発現量は黄体初期および退行期と比較し高かった。3)子宮内膜組織および上皮細胞,間質細胞においてPGF添加によりPGF産生が刺激された。また,IndoはPGF添加によるPGF産生刺激作用を抑制した。4)子宮内膜上皮細胞および間質細胞においてPGFはcyclooxygenase (COX)-2 mRNA発現を刺激した。COX-2はPGF合成酵素の一つのため,ウマ子宮においてPGFはCOX-2発現を増加させることでPGF産生を刺激していると考えられる。本研究の結果より,ウマにおいて少量のPGF投与でも黄体が退行する理由は,子宮にPGF自己増幅機構が存在するためと推察される。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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