[目的]LHサージ後の顆粒膜細胞の黄体化に伴い増加するCyp11a1(P450scc)遺伝子発現変化にepigeneticな制御機構が関与するかを検討した。
[方法]3週齢SD系雌ラットにeCG 15 IUを皮下注し,その48時間後にhCG 15 IUを皮下注することで排卵誘発を行った。1) hCG投与後4,8,12hの卵巣から顆粒膜細胞を回収し,Cyp11a1 mRNAの発現変化を検討した。hCG未投与を0hとした。2) 0,4,12hから回収した顆粒膜細胞を用いてCyp11a1のpromoter領域について,①ChIP assayを用いたヒストン修飾(H3K4me3,H3K9me3,H3K27me3)の解析,②Bisulfite sequencing法を用いたDNAメチル化の解析,③DNase I chromatin accessibility assayを用いたクロマチン構造変化の解析を行った。
[結果]1) Cyp11a1 mRNAはhCG投与後増加し,4hにピークとなり,以後12hまで0hと比較し高値を維持した。2) ①promoter領域(−23bp~−206bp)では,転写活性に働くH3K4me3は12hに向かい有意に増加し,逆に転写抑制に働くH3K9me3とH3K27me3は12hに向かい有意に減少した。②promoter領域(約-500bpまで)の5 CpG部位のDNAは低メチル化であり,hCG投与後も有意な変化は認めなかった。③promoter領域(−23bp~−206bp)のクロマチン構造は0hと比較し,12hに向かい弛緩する方向に変化した。
[結語]顆粒膜細胞の黄体化に伴い増加するCyp11a1 mRNAの発現変化には,ヒストン修飾によるクロマチン構造の変化を介した転写調節が関与していることが考えられる。