日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-101
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生殖工学
最適化されたCAS9/gRNAシステムによるゲノム改変マウスの作製
*藤井 渉川崎 紅杉浦 幸二内藤 邦彦
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抄録

【目的】近年,細菌や古細菌の獲得免疫機構であるCRISPRが真核細胞ゲノム配列の改変に有効であることが報告されている。しかし,哺乳類における報告は少なく,その効率や最適条件の検討は不十分である。本研究では,CRISPR構成因子であるCAS9ヌクレアーゼおよび人工設計したguide RNA(gRNA)からなるCAS9/gRNAシステムの発生工学ツールとしての最適化を試み,マウスにおいて複数ゲノム改変および大規模ゲノム欠損に利用可能であるかを検討した。【方法】2種類の異なるgRNA(long型,short型)をRosa26座位の同一の標的配列に対して設計し,マウス初期発生過程での変異導入効率を比較した。また,受精卵へのCAS9 mRNAおよびgRNAの導入濃度について検討した。最適条件において,同一染色体上の10kb離れた2ヶ所の座位に,同時に変異が導入可能であるか,また得られた産子に導入された変異が次世代へ伝達されるかを調べた。【結果】同一配列に対するlong型/short型gRNAの効率比較を行った結果,マウス初期発生においてlong gRNAが極めて高い変異導入活性を示した。CAS9 mRNAとgRNAを10μg/ml以上の濃度で受精卵へ導入した場合は胚移植で得られたほぼ全ての産子で変異が認められた。2つのgRNAの共注入により同一染色体上の2ヶ所の標的配列の同時破壊を試みた結果,高効率(89%)に2ヶ所両方へ変異が導入され,更に33%の産子では約10kbの標的配列間が削除された大規模な欠損が認められた。また,これらの変異は次世代個体に伝達された。以上より,最適化されたCAS9/gRNAシステムはゲノム改変マウス作製のための非常に有効な発生工学ツールとなることが明らかとなった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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