日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第58回日本農村医学会学術総会
セッションID: P2-D410
会議情報

リストバンド装着中の菌の増殖調査
永田 沙由理市川 貴代冨永 等
著者情報
キーワード: リストバンド
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

〈はじめに〉当院では,平成19年9月から電子カルテが導
入された。それに伴い病棟では,リストバンドを用いた患
者認証システムを使用するため,入院患者全員にリストバ
ンド装着をお願いしている。主な目的は患者間違いの防止
である。しかし長期に入院している患者や入浴できない患
者にとってリストバンドが汚染され,感染の原因となって
いるのではないかと疑問を感じた。リストバンドは抗菌仕
様になっているが,どの程度抗菌作用が持続するのか,リ
ストバンドに感染源はないのかを明確にしたいと考え調査
研究を行った。
〈目的〉リストバンドを継続して装着することで,抗菌作
用が低下し,細菌が付着,感染の原因となるという仮説を
立てた。
〈結果〉今回の研究から,装着したリストバンドからコロ
ニーが0という検体はなかった。検出された菌は皮膚常在
菌の他に,感染症の原因となるS. aureus,S. haemolyticus
などの菌も検出されていることから,抗菌作用の効果
は少ないと考えられる。
装着後1週間ではすでにコロニーが検出され,清拭群と
入浴群を比較すると,清拭群にコロニー数が多く検出され
ていることが分かった。また,装着期間が長くなるほど,
菌は増殖してしまうと考えられる。現在使用しているリス
トバンドは,撥水性が少なく,入浴後などには皮膚に張り
つくことがある。皮膚とリストバンドの間に水分が加わる
ことで温床を作り,菌の増殖を促進させた可能性も考えら
れる。
〈今後の課題〉今回の研究においては,仮説を立証するこ
とはできた。しかし,研究期間が短く,リストバンド装着
前の皮膚の細菌の数を調べていなかった。そのため具体的
な交換時期を検討するまでには至らなかった。また継続し
て装着することで,菌が増殖傾向にあることから,入浴後
などの清潔ケアの検討が必要になると考える。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top