〈はじめに〉糸魚川市は人口5万弱,高齢化率も32.1%と
高く,他地域と交通の便の悪い地域である。急性期病院
は,当院(一般病床269床,うち特殊疾患療養病棟2が49
床,常勤医は姫川病院閉院時24人,外来受診者は1日約800
人)の他に姫川病院(一般病床114床,常勤医はピーク時
15人,閉院時6人,外来受診者は1日約200人)と整形外
科病院(62床)があった。しかし,姫川病院は医師の減少
と経営難から24億円の負債を抱え平成19年6月末に閉院し
た。
〈方法〉糸魚川地域が受けた影響を知るため,当院の救
急・入院・外来の患者数の変動を追った。なお,救急に関
してはこの危機を乗り切るためシステムの変更が行われ
た。
〈結果〉
救急医療:18年度は地域の救急搬送の71%(1,215人/
1,721人),19年度83%(1,570/1,884),20年度86%(1,514
/1,751)を当院で診た。これに当って,富山大学救急災
害医学講座からの応援と糸魚川市医師会が当院で1次救急
を行うシステムが構築された。
入院医療:姫川病院閉院時の全入院患者20人は当院に転
院した。19年度の当院の入院患者の延べ数は89,298人であ
り,18年度の85,167人に比し人数で約4,000人,率で約5
%の増加となった(20年度は90,815人)。
外来医療:姫川病院の外来患者は可能な限り開業の先生
方に診てもらった。内科では姫川病院からの紹介患者専門
の振り分け外来を開いて対応した。病院全体の外来新規患
者数は18年度前半の12,409人に比し19年度前半で12,728人
と2.6%増であり,内科では各々2,203人と2,899人であり
31.6%増を示し脳外科においても各々444人と368人と20.7
%増となった。しかし外来延べ患者数では全体で0.2%
増,内科で10.1%増,脳外科では3.2%減と増加を抑える
ことができた。20年度前半はいずれも19年度に比し減少し
ていた。
〈結語〉入院患者は5~7%程増えたが,救急と外来にお
いては地域全体と大学の協力で当院の負担増を軽減でき,
これにより医療崩壊を食止め得た。