日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
セッションID: 26-24
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田舎で病院が倒産するということ
姫川病院閉院が糸魚川総合病院に与えた影響
樋口 清博谷 昌尚高桑 一彦月城 孝志山岸 文範新保 雅宏北澤 慎次野々目 和信斉藤 琢磨池田 成子
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抄録

〈はじめに〉糸魚川市は人口5万弱,高齢化率も32.1%と 高く,他地域と交通の便の悪い地域である。急性期病院 は,当院(一般病床269床,うち特殊疾患療養病棟2が49 床,常勤医は姫川病院閉院時24人,外来受診者は1日約800 人)の他に姫川病院(一般病床114床,常勤医はピーク時 15人,閉院時6人,外来受診者は1日約200人)と整形外 科病院(62床)があった。しかし,姫川病院は医師の減少 と経営難から24億円の負債を抱え平成19年6月末に閉院し た。
〈方法〉糸魚川地域が受けた影響を知るため,当院の救 急・入院・外来の患者数の変動を追った。なお,救急に関 してはこの危機を乗り切るためシステムの変更が行われ た。
〈結果〉
救急医療:18年度は地域の救急搬送の71%(1,215人/ 1,721人),19年度83%(1,570/1,884),20年度86%(1,514 /1,751)を当院で診た。これに当って,富山大学救急災 害医学講座からの応援と糸魚川市医師会が当院で1次救急 を行うシステムが構築された。
入院医療:姫川病院閉院時の全入院患者20人は当院に転 院した。19年度の当院の入院患者の延べ数は89,298人であ り,18年度の85,167人に比し人数で約4,000人,率で約5 %の増加となった(20年度は90,815人)。
外来医療:姫川病院の外来患者は可能な限り開業の先生 方に診てもらった。内科では姫川病院からの紹介患者専門 の振り分け外来を開いて対応した。病院全体の外来新規患 者数は18年度前半の12,409人に比し19年度前半で12,728人 と2.6%増であり,内科では各々2,203人と2,899人であり 31.6%増を示し脳外科においても各々444人と368人と20.7 %増となった。しかし外来延べ患者数では全体で0.2% 増,内科で10.1%増,脳外科では3.2%減と増加を抑える ことができた。20年度前半はいずれも19年度に比し減少し ていた。
〈結語〉入院患者は5~7%程増えたが,救急と外来にお いては地域全体と大学の協力で当院の負担増を軽減でき, これにより医療崩壊を食止め得た。

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© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
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