日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J312
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一般講演
携帯式端末を使用した医療安全システムの提案
指紋認証とバーコードを利用した患者/薬剤管理
福原 昇
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抄録

【背景と目的】入院の短期化にともない病棟では以前と比較して取り扱い患者数が増加しており仕事量が増加している。外来でも外来手術、外来化学療法等が増加してきている。短期間で多数の患者への対応が必要となってきており医師・看護師ともに数回しか接しない患者に対して侵襲的医療行為を実施する機会が増えている。このため従来行われていた職員による患者の顔識別による本人確認は実施困難となってきており、患者のとり間違えが生じる危険性は高くなっていると考える。一方で化学療法剤やその他の薬剤を点滴ボトルに混注した際に薬剤名をボトルに記載することは個人情報保護の観点から問題視されてきており、投与薬剤の確認業務も臨床上の問題となってきている。今回、これらの問題に対応すべく携帯式端末を利用した個人認証およびバーコードを使用した患者/薬剤管理システムを考案したので報告する。【方法】使用機器は指紋認証システムと携帯式端末(バーコード読み取り機能対応)である。指紋認証を行うと携帯式端末に患者の顔写真、氏名、生年月日、IDが表示され、当日の投薬内容等が表示される。薬剤管理としては点滴ボトルや血液製剤等に患者氏名、生年月日、ID、薬剤名等をバーコード化してシールとして貼っておき、これを携帯式端末にて読み取ることでこれらの情報を端末に表示し続いて当日の投薬予定等の情報との照合を行い確認する、さらにその後に顔写真表示にて患者認証を行う。これらの行為はすべてベットサイドで実施することができる。【考察】限られた人員数で忙しい病棟や外来においては複数人での確認であっても確実であるとは限らない。誤認、思い込み、情報の不適正伝達などのヒューマンエラーの軽減目的にて本システムを考案した。現在、広く実施されているリストバンドによる患者管理は入院患者にしか対応しておらず、日々数百名以上の外来患者が来院する病院においては費用面から今後も実用化が困難であると考える。また診察券による本人確認も診察券を患者が持参しないことがあるなどの理由で信頼性には疑問がある。指紋による個人認証は生体認証のなかでは最も普及しており金融機関ではすでに実用化されている。指紋は不携帯の心配がなく信頼性も高い。指紋認証機器は小型化されており安価でもあるため医療分野での普及にも適していると考える。一方でバーコードは流通業では商品管理に広く使用されている。医療分野でも生物由来製剤には表示が義務付けられるなど今後は病院でも広く使用されていくことが考えられる。個人認証とバーコードを利用した物品の使用確認は会計処理および在庫管理にも応用可能と考える。本システムに使用する患者情報はUSB接続やSDカードなどの記録媒体を利用して日々更新することが可能である。使用端末には当日に入院中の病棟患者または外来各部署の予約患者(たとえば当日外来化学療法を受ける患者)のデータのみを更新して保持していれば良い。これらの患者数は50名程度であるため大容量の記録装置の必要もない。このため院内LANを有しない病院でも使用可能と考える。本システムの構成機器は現在考案中のシステムでも持ち運びには問題がないが今後さらに小型化が可能であると考える。【結語】本システムは医療における安全性を高めるために有用であり普及が望まれる。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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