日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E23
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一般演題
『万一に備えて』
災害伝言板による連絡網の確立を
平間 好弘澤畑 博沼崎 誠吉田 公代新谷 周三椎貝 達夫
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キーワード: 災害, 災害伝言板, 連絡網
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抄録

<目的> 新潟県中越地震や阪神淡路大震災の勃発により、国民は思いもよらぬライフパニックを体験した。ライフパニックとは、流通経済大学の故渡辺博史社会学部長が提唱した言葉で、「人生の生活や生命を不本意に襲う危険の伴う出来事」。したがって、その危険や不幸をできるだけ最小限にくいとめるための対策が必要である。
 そこで、当院では昨年、地域住民300人と職員580人に「地域との関わり」や「災害発生時の救援・救助活動」などのアンケートを行い、その結果から問題点や改善すべき点を明らかにすることを目的に実施したので報告する。
<方法:結果> 住民アンケートは、昨年の10月に開催された病院祭「第15回ふれあいまつり」に合わせ見学者に無作為で行い、職員アンケートは1月に実施した。
 注目された「地域との関わり」では、実際におこりうる3つの緊急事態をあげ、それらの出来事に近隣の人が見舞われた場合、「助けられそうですか」をきいた。
 住民アンケートでは、「助けられる」「たぶん助けられる」を合わせた救助活動の割合は、<災害後の救助活動>79.8%、<災害発生時の救援・救助活動>68.7%であった。職員は、<災害後の救助活動>64.6%、<災害発生時の救援・救助活動>63.3%で、ほとんど差はなく「助けられない」の割合を大きく上回っていた。
 一方、情報関連については、震度6以上の地震が発生した場合に利用可能な携帯電話によるiモード災害伝言板を住民の24.9%、職員の50.6%が「知っている」と回答した。NTTドコモのiモード災害伝言板は、伝言登録をすると同時に、5個所にメール送信が行なえる。当院では、(1)当院の災害用携帯電話アドレス(2)当院の災害用パソコンアドレスを入力するよう職員に依頼し、直接災害対策本部が『確認』できるシステムとして昨年の2月から訓練を実施している。
<考察> 相模湾のフィリピン海プレートと陸側の北米プレートの境界の活断層の一部(約25km)にマグニチュード8程度の規模の直下型地震が発生する可能性が高い、と政府の地震調査研究推進本部が発表している。
 茨城件沖地震に関しては、今後30年間以内に90%の確率で発生する予測が出ている。
 地域の災害に関して、消防署員や警察署員、看護師、NTT職員などのOBの方たちが講師となった災害講習会の開催を提案する。
 例えば(1)災害に対する心構え,(2)もしものときの救助活動,(3)もしもの時の連絡方法などの講習会の開催である。
 またアンケートでは、iモード災害伝言板を知っている方が少ないことから、病院ニュースや報道機関を利用し、住民と職員への災害伝言板の周知が必要である。
<結語> 新潟県中越地震では、全国の救急病院に配置されている厚労省の「広域災害救急医療情報システム」が利用できなかった。そこで、同システムと一緒に設置した携帯電話(通話のみ)に iモード機能を付けることにより、災害用伝言板を利用し、5個所のメール送信を(1)病院長,(2)病院の災害対策委員長,(3)市町村,(4)県,(5)厚労省などの担当部署アドレスを登録することにより、地域あるいは全国の病院の状況を把握することができ、重症な患者さんの円滑な移送を可能にするのではないだろうか。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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