日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E08
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一般演題
A長野厚生連らせんCT検診車による肺がん検診の成績(第4報)
-検診対象者の検討-
塚越 愛子西沢 延宏野口 修丸山 雄一郎
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キーワード: 肺がん検診, CT検診
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抄録

<目的> JA長野厚生連では、1985年から県内11病院と健康管理センターで「肺癌専門委員会」を組織し、胸部検診活動を行っている。私たちは更なる肺癌早期発見のために独自にらせんCT検診車を整備し、長野県内の巡回型肺癌検診を2001年1月に開始した。4年間(2001から2004年)の肺癌CT検診の結果を報告し、さらに喫煙との関連を含め検診対象者について検討した。
<方法> 2001年1月からの4年間、JA長野厚生連らせんCT検診車により、県内を巡回し、肺癌検診を実施した。CT撮影方法は、管電圧120kVp、管電流25mA、テーブル移動速度15mm/回転、0.7秒/回転、ピッチ1.5とし、肺尖部から肺底部方向に撮影した。撮影したCT画像はJA長野厚生連の各病院で分担し高精細モニターを有する端末で読影するとともに、読影結果をオンラインで健康管理センターに集計した。読影の判定区分は日本肺癌学会判定基準に拠った。
 今回さらに発見癌者の喫煙状況について検討を加えた。
<結果> 2001年6,633名、2002年6,369名、2003年8,309名、2004年9,257名と受診者は増加してきており、総計30,568名の検診を行った。男性が58%、女性が42%で平均年齢は、男性56.04歳、女性57.68歳であった。
<判定結果> 判定結果で精密検査対象となるD・E判定は、2001年の17.7%から2002年は15.5%、2003年12.7%、2004年10.1%と低下してきている。
<精密検査結果> 精密検査の受診率は2001年は89.8%であり、2002年は89.8%、2003年86.2%、2004年81.5%である。
 精密検査の結果、2001年は44名(0.663%)、2002年は17名(0.267%)、2003年27名(0.325%)、2004年23名(0.248%)、総計111名(0.363%)(男性40名、女性71名)の肺癌患者が発見され、ほとんどの症例で手術が行われた。発見年齢のピークは男女共に60・70歳代で、平均年齢は男性64.68歳、女性63.56歳であった。
 発見癌は、他研究同様90%程度が腺癌で、10mm以下の小型肺癌が約半数を占めた。発見された腺癌患者のうち、約70%が非喫煙者の女性であった。また扁平上皮癌は発見癌全体のうち5%であるが、全員喫煙者か過去喫煙者の男性であった。
<考察と問題点> CT検診は、肺癌発見率が高率であることや圧倒的に早期の肺癌が多いことなど、従来の胸部検診に比べて優れた成績を上げており、肺癌死亡の減少に役立つと考えている。特にCT検診で多く発見される腺癌は症状が出にくく、ゆっくり進行するためCT検診による早期発見の意義は大きい。
 肺癌の最大のリスクファクターは喫煙とされており、確かに喫煙と関連の深い扁平上皮癌も少数だが発見されている。しかしCT検診で発見された肺癌の90%は喫煙と関連の少ない腺癌であり、非喫煙者の女性である。
 一方CT検診を行っている実施主体では、検診対象者を多量喫煙者とし、補助金の対象も限定しているところもある。まだ一般的にも肺がんイコール喫煙というイメージが強く、その上検診対象者が限られているため、肺癌が発見される機会が見過ごされてしまう可能性が高い。今後個人及び各組織へ、肺癌の動向をふまえたこれらの情報の伝達を一次予防と共に行い、肺癌検診の必要性を周知させていく役割があると考える。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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