日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E03
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一般演題
食生活診断結果からみた肥満者の現状と課題
松本 典子佐藤 いづみ谷 智恵子井上 裕美子曽我 佳代中村 恭世
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キーワード: 肥満, 栄養素等摂取, ドック
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抄録

<緒言>当センターでは宿泊人間ドック受診者を対象に食生活診断を実施している。今回非肥満者と肥満者について、またその肥満者の内さらに血清脂質異常、高血圧、高血糖の有所見数で、栄養素等摂取に違いがあるかを検討したのでここに報告する。
<対象及び方法>平成17年度に宿泊人間ドックを受診した1,776名で男性1,103名、女性673名、平均年齢50.2歳。
 その内BMI25未満の者1,279名(男性717名、女性562名 平均BMI21.9)を非肥満群、BMI25以上の者497名(男性386名、女性111名 平均BMI27.3)を肥満群とし、栄養素等摂取の比較を行った。
 更に肥満群をBMIのみ異常の者134名、BMIの他に血清脂質異常(TG150mg/dl以上かHDL40mg/dl未満のいずれか又は両方)・高血圧(収縮期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上のいずれか又は両方)・高血糖(空腹時血糖110mg/dl以上)のいずれか1つの所見を有する者197名、2つ128名、3つ38名の4グループに分け、栄養素等摂取の比較を行った。食生活問診は30項目からなる頻度調査を用い、ドック受診当日に管理栄養士が聞き取り確認を行った。
<結果>非肥満群と肥満群の栄養素等充足率で有意な差が見られたものとして、エネルギーでは非肥満群106.2%に対し、肥満群111.8%と肥満群の方に明らかな過剰摂取が見られた(p<0.05)。炭水化物は非肥満群96.1%、肥満群100.5%で有意差が見られたが(p<0.05)、両群とも適正範囲内の摂取であった。蛋白質、脂質に関しては有意な差は見られなかった。またアルコール類の摂取エネルギー量は非肥満群83kcal、肥満群100kcalで肥満群の方が多く摂取しているという結果であった(p<0.05)。食物繊維の充足率に関しては有意な差は見られず、いずれも47%程度しか満たしていない状況であった。次に食品群別充足率で見ると、両群に有意差は見られなかったが肉類(非肥満群158.7%、肥満群161.2%)、油脂類(非肥満群121.3%、肥満群124.8%)で過剰摂取が見られ、野菜類(非肥満群39.7%、肥満群40.2%)は不足であった。
 また肥満群の有所見数における栄養素等摂取の違いについて見ると、4つのどのグループにおいても栄養素等と食品群別充足率のいずれにも有意な差は見られなかった。
<考察>今回、非肥満群に比べ肥満群は肥満を引き起こす一要因のエネルギー量が確実に多いということが明らかになった。過剰が目立ったアルコール類や肉類、油脂類、またメタボリックシンドロームの予防・改善には欠かせない食物繊維(食品群では野菜類)については、肥満群はもちろん非肥満群に対してもあらゆる疾病の予防や改善の為に、今後の指導の重要項目としておさえていく必要がある。また、肥満群の有所見数における栄養素等摂取に差が見られなかったことにより、まずは根底にある肥満を改善することが、血清脂質異常や高血圧、高血糖の改善にも繋がると考える。その為にはエネルギー量の過剰摂取を抑え、個々にあった的確な栄養指導を展開していくことが大切である。また、肥満の改善には欠かせない運動との関連についても今後検討していく必要があると思われる。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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