日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1F04
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一般演題
研修医対象の臨床栄養オリエンテーションを実施して
佐藤 栄一柳沢 素子結城 敬
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抄録

<緒言>近年、臨床栄養の分野は劇的に変化している。その理由としては、栄養管理による疾病治療への有効性が注目されていることに加え、医療経済の点からも栄養療法を実践するほうが有利であること、保険診療上の変革の流れも栄養管理を奨励し後押ししていることが挙げられる。実際の医療現場では、医師、看護師、栄養士、薬剤師、臨床検査技師、嚥下療法士など多職種がチームを組んで栄養管理に取り組む栄養サポートチーム(以下、NST)が全国の数多くの医療機関で立ち上げられ活動を開始している。それに伴い、病院内外の栄養関連の学会や研修会、勉強会も数多く開催され、臨床栄養への関心の高い医療従事者は積極的に参加し、自己研鑽に励んでいる。こうした臨床栄養分野の大きな流れの中、医学部学生への卒前教育と初期臨床研修医(以下、研修医)への卒後教育の中で、臨床栄養教育の実態は不明である。
 今回、当院の研修医への就職時のオリエンテーション期間中、臨床栄養の講義を2年に渡り実施した。その講義の前後で行った研修医対象のアンケートの結果を交え、当院での取り組みを報告する。
<対象と方法>平成17年度、平成18年度当院採用の研修医計29名中当日欠席した1名を除いた28名を対象に、就職時のオリエンテーション期間中に各々2時間の臨床栄養に関する講義を実施した。講義は約1時間の座学と、実際に入院患者に出している病院食の実食と栄養補助食品の試飲と質疑応答という内容であった。講義前に研修医を対象にアンケートを実施し、更に講義終了後にもアンケートを実施した。
<結果>平成17年度研修医は11大学出身の14名である。平成18年度は14大学15名である。(1名欠席のため14名が対象)。大学で臨床栄養に関する講義の有無についての質問では、「(講義が)あった」と回答した研修医は平成17年度では2名、平成18年度では3名であった。「講義のうち臨床栄養と名の付く講義はなかったが、一部の講義で触れられていた」と回答した研修医は、前者は7名、後者も7名であった。それ以外の大学では臨床栄養に関する講義は「なかった」としたのは前者3名、後者4名であった。その他に、講義前には「一般の栄養に関するイメージ」や「臨床栄養のイメージ」について尋ねた。また、「栄養に関する基礎的な用語の意味」や「講義への期待」を質問した。講義後のアンケートでは「講義の感想」を尋ねた。それには平成17年度、平成18年度の研修医全員が「有意義であった」と回答した。その他「(講義前と比較して)臨床栄養のイメージの変化」や「興味のある具体的な臨床栄養の内容(例:輸液の基本、経腸栄養法など)」、「来年度の講義の改善点」を質問し回答を得た。実際の講義では、補助栄養食品の試食試飲実習を行い、好評を得た。
<考察>2年間に渡る今回の取り組みで、当院採用の研修医の卒前教育中の臨床栄養に関する講義の大学間のばらつきが明らかとなった。その一方で、研修医自身の「栄養」「臨床栄養」に対するイメージも講義前には研修医各々で様々であったが、講義後には臨床栄養の重要性を十分理解してもらえた。
 今後は、オリエンテーションだけで触れていた臨床栄養に関する講義を体系化させ、一定期間継続的に講義・実技する卒後研修プログラムを構築していくことが課題である。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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