日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1L03
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新潟県中越地震被災病院の栄養科の記録と今後の課題
佐藤 妙子久我 千代子
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抄録

  新潟厚生連魚沼病院の栄養科のスタッフは調理師8名、調理助手2名、管理栄養士で構成されている。2004年10月23日、午後5時56分、突然の中越地震で、被災地である魚沼病院のライフラインはストップした。当日現場には調理師2名が勤務しており、リフトで夕食を病棟に上げた後の出来事であった。厨房内は、大型厨房器機や盛付け棚が転倒し、ガラス、食器類は破損し、事務室ではプリンターが落下するなど、大変な被害を受けた。当日病院に駆けつけた数名の調理師が、倉庫からの備蓄用非常食の移動や、外来やボイラー室などの他部署の手伝いにあたった。24日、栄養科の職員の中には家が全壊、半壊した者もいたが、非常時連絡網も使えない中、通勤困難な者2名以外は全員が出勤し、今後の患者様への食事の提供について話し合った。自家発電からの電源を使用し、電気炊飯器2台で米を炊きおにぎりを作り、支援物資もまだ届かない状況であったので、入院患者様を始め、付き添いの方、外来患者様、地域住民の方、職員に配給した。リフト、エレベーターが使えない中で食事にかかわることは、栄養科がすべて行なう事となり、配膳には階段を使い、用意した食事を一人一人に手渡しで配って歩いた。日々状況が変わる中で献立内容、配膳時間を検討し対応した。震度4から6弱の余震が続き、自宅の片付けもままならず、職員の疲労もピークに達していった。
「今後の課題」
1)非常時の食事対応と栄養管理。朝礼、終礼では各職場の業務内容の報告を行なっていたが、入院患者様には非常時の食事内容、配膳時間などの変更が伝わっておらず、院内アナウンス等でお知らせする事が必要であった。また内科、外科病棟など、食事が係わる疾病の患者様が入院されている病棟の、医師、看護師との連絡を密にし、患者様の状態を把握し、栄養管理を行なう事も今後の課題である。
2)備蓄用非常食の検討。道路寸断の状況下の中では、最低2日分の確保が必要であると確信した。水、缶粥は必需品であり、アルファ米の五目御飯、味噌汁缶、フルトップ式の一人用の惣菜缶は配膳しやすく患者様にも喜ばれた。費用、保管場所、内容について今後の検討が必要である。
3)医師、看護師以外のスタッフの確保。病院の食事は3食患者様に提供することが必須である。ライフラインのストップや厨房内の破損により調理、配膳に時間がかかる事に加え欠勤者もいたことから、栄養科スタッフにもかなりの疲労がみられた。救急・災害医療チームの中にぜひ調理スタッフを加える事を検討していただきたい。
4)被災された患者様への支援活動。食事指導外来にこられる患者様の中には、仮設住宅で生活されている方もおり、ストレス、食生活の変化から体調を崩している方が多い。前向きに考えられるよう支援していきたい。最後に今回の震災で、自然災害の恐ろしさを体験したと同時に人の力の逞しさ、やさしさ、すばらしさを垣間見ることができた。今日に至るまでの多くの方々の暖かいご支援に心より感謝申し上げます。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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