本研究の目的は、高齢自転車利用者が自動車接近中の道路を横断する際において、横断可能と判断する接近自動車までの時間的かつ距離的な間隔を決定する、ギャップアクセプタンス行動に影響を及ぼす心理的要因を解明することであった。高齢者の参加者は自転車にまたがった状態で、右方から接近する自動車を見つめた。自動車の接近速度は20km/hと30km/hの2通りであった。参加者は、「これ以上自動車が接近すると横断できなくなる」と判断した時点で反応をした。日常的に「自動車側が道を譲ってくれる」と期待している高齢者ほど、道路横断時により近くまで自動車の接近を許容し、不安全な判断を行う傾向があった。また、予想と実際の横断所要時間の乖離も、高齢者の不安全な自転車運転行動の原因である可能性が示された。教育的介入によりこれらの要因の影響を低減させることで、高齢者の自転車事故を抑止できる可能性があると考えられる。