絶対音感とは外的な基準なしにその音の高さを同定することができる能力である。絶対音感保持者と非保持者の違いが見られる現象の1として、音高の記憶方略の違いが挙げられる。音高を記憶する際に、非保持者は物理的な音の高さで保持するのに対し、絶対音感保持者は音名で保持する傾向があるということが知られている(Zattore,2001)。行動的な研究以外にも、PETやfMRIを用いた研究では、絶対音感保持者は左半球に特有な脳活動が見られることが示唆されているが、その数は多くなく、統一された見解は得られていない。また、近赤外線分光法(NIRS)は、非侵襲的なニューロイメージングの手法であり、騒音もないことから、聴覚実験に適していると考えられる。そこで、本研究では課題の難易度(音高の保持を必要とするかどうか)を操作し、2種類の音の弁別課題を行った。また、課題遂行中の脳活動をNIRSによって計測し、絶対音感保持者と非保持者の違いを検討した