日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-3
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ワークショップ1: 獣医学分野における毒性学教育
企業/研究の視点から求められる獣医学教育
*鈴木 雅実
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抄録

医薬品の研究開発において、獣医師に期待される特徴・長所は、生物をwhole bodyとして理解している点、病気を理解している点と考えている。基礎過程では、生物をwhole bodyとして学ぶとともに、動物種の特徴を知ることでヒトと動物の共通点・相違点(比較生物学)を学ぶ。その後、病態、応用、臨床過程では様々な病気の成り立ちと、その治療について学ぶ。これらの学習より、獣医師が医薬品研究開発過程の様々な場面で活躍することが期待される。

獣医毒性学は、主に安全性・毒性評価など非臨床研究の遂行、データ解釈に関わる基礎知識を提供する。実際の現場では、新規の化合物などを対象としてその毒性・生体反応を評価するため、教科書に記載のない新たな毒性・生体反応に遭遇する。その際、教科書より得た知識をベースに、様々な専門書、学術誌から知見を吸収し、解釈に務める事となる。大学教育では、獣医毒性学に限らず、基本的な知識を身に着けるとともに、社会実装ではさらなる学習が必須であり、専門書・学術誌などを専門用語の意味を適切に理解したうえで読み込み、考える姿勢・力量を身に着けてほしいと考えている。

医薬品の研究開発過程では、多様な専門性、例えば、化学、タンパク質科学、インフォマティクスなど、背景が異なる専門家との協働が日常的に行われる。毒性・生体反応を獣医学・獣医毒性学の専門用語を用いて表現するが、これらの専門用語での説明は専門外の研究者とのコミュニケーションでは部分的にしか機能しない。毒性・生体反応の内容・意味を平易な言葉でわかりやすく伝えるなど、専門外の研究者との良好・有用なコミュニケーションを心がけていく姿勢も身につけてほしいと考えている。

本セッションでは、医薬品の研究開発の視点から、今後の獣医学・獣医毒性学教育への期待について述べる。

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