日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-2
会議情報

シンポジウム8: 化学物質のアダクト形成を介した新規毒性機構の解明とその検出
環境化学物質によるヒストン修飾を介した遺伝子発現調節
*伊藤 昭博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

エピジェネティックな遺伝子発現制御は、細胞の運命を決定し、様々な生命現象に関与する。一方、このエピジェネティックな遺伝情報は環境変化等により比較的容易に変化し、その異常はがんなどの疾患の原因になる。ヒストンのリジン残基上で起こるアシル化修飾は、エピジェネティック制御の分子基盤の一つである。これらのリジンアシル化の少なくとも一部は、脂肪酸などの生体内のカルボン酸がアシルCoAを介してリジン残基のεアミノ基に付加されることによって引き起こる。我々は、食事等により様々な化合物を日々に摂取しており、その中にはカルボン酸も含まれる。これら非意図的に摂取している生活環境由来のカルボン酸も、内在性の脂肪酸などと同様にヒストンに修飾し、遺伝子発現変化を誘導する可能性がある。実際、我々は複数の生活環境由来のカルボン酸がヒストンのリジン残基に修飾し、少なくともその一部は遺伝子発現変動を惹起することを見出した。本発表では、食品添加物であるソルビン酸由来ヒストン修飾による遺伝子発現調節を中心に、環境化学物質の隠された機能について紹介したい。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top