日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-1
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シンポジウム6: 医薬品製剤のExtractablesとLeachablesの安全性評価の考え方
ExtractablesとLeachables安全性評価の背景と課題
*三島 雅之
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抄録

2020年施行の食品衛生法改正では、食品容器具及び包装容器について安全性を評価した物質のみを使用可能とする、ポジティブリスト制度が導入された。現在、医薬品に関して同様のリストは無い。医薬品の場合は、製剤の用法用量に適する多様な包装容器が必要となり、一律の規制が難しい。たいていの医薬品では食品と比較して包装容器との接触面積がかなり小さいので、包装容器から製品に移行する化学物質の量は食品よりも少ないと考えられるものの、製造に用いる器具や包装容器から意図せず化学物質が溶出して医薬品に混入し、人体に曝露していることは明らかである。特に問題になるのは、微量で毒性を発現する物質が容器施栓系に使われる場合である。注射剤バイアルに使われるゴム製品の中には重合促進剤としてニトロソアミンを添加するものもあるし、ニトロセルロースを含有するブリスター包装が印刷インクに含まれるアミンと反応してニトロソアミンを生成し製品を汚染したと考えられる事例もあるなど、ありふれた製品に問題が潜んでいる。ゴム製品やプラスチック製品には可塑性や耐久性を高める様々な添加剤が使用されているが、詳細はユーザーに公開されない。我々は、管理された抽出条件下で対象となる素材から溶出したextractablesの情報を参考に、実際に製品に混入するleachablesのアセスメントをするしかない。しかしながら、検出された物質について毒性試験が実施されていないなど、問題も多い。ここでは、ExtractablesとLeachablesの安全性評価が必要な背景と、トキシコロジストがそこで生じている問題にどう取り組んでいけばよいのかを議論する

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