日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S36-5
会議情報

シンポジウム36: 途上国で「今」起こっている環境汚染とその毒性影響
アフリカにおける金属汚染:ザンビアの鉛汚染を例に
*中山 翔太石塚 真由美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

長寿高齢化と高度情報化が急速に加速する日本や欧米先進国における医療や産業を支える科学技術には、進化する高度技術を支える金属やレアアースが必須であり、これら地下資源の大部分をアフリカ諸国をはじめとする資源国の開発に依存している。しかし、地下資源の探索に伴って顕在化されない環境汚染がこの地域において着実に進行している。現状で既に拡大・深刻化してきている環境汚染問題は、今後さらに顕在化され動物や人により甚大な影響を及ぼすとWHOをはじめとする国際機関が警鐘を鳴らしている。演者らは、2008年よりザンビア大学、ザンビア保健省、家畜水産省、鉱山省、環境保護局などの政府機関と共同研究を実施しており、ザンビアのKabwe鉱山エリアにおける家畜・家禽の可食部に食の安全を脅かす高濃度の鉛蓄積を報告した。さらに、同地域における子供 300名、母子440組(880名)および500世帯(約1250名)の血中鉛濃度を測定し、鉱山付近では対象の100%が警告濃度とされている値を超過する深刻な汚染実態であることを明らかにした。また、大人に比べて子供の血中鉛濃度が高いことに加えて、鉱山近郊、特に風向の風下のエリアである西側地区で血中鉛濃度が高いことが示され、汚染源である鉱山からの距離だけではなく、方角や年齢も鉛濃度の規定因子であることが明らかにした。粉塵および母乳を介した乳児の鉛暴露経路の解明や金属暴露による血液毒性や腎毒性、DNAメチル化などのエピジェネティックへの影響に加えて、子供の鉛暴露による母親のQOL低下を引き起こすことも明らかにし、対象となる子供の治療のみならず、根本的な暴露源や暴露経路への対策の重要性を示した。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top