日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S33-3
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シンポジウム33: Microphysiological system(MPS)技術の現状と展望:医薬品・化学品開発と規制への応用に向けて
MPS技術の開発と社会実装への取り組み
*酒井 康行
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抄録

幹細胞や培養系に関する格段の学術的進歩(学術的必然)と動物実験代替という社会的要請を背景として,MPS開発と実用化の機運が世界的にも高まっており,欧州organ on a chip学会(EUROoCS)や国際学会iMPSSも設立された.米国食品医薬品庁(FDA)の動物実験代替法ワーキンググループによる新たなMPSの定義によれば.MPSは静置培養であっても三次元培養や共培養を含む先進的な細胞培養系を全て含む極めて広いものとなり,灌流を行うOrgan on-a-chipはその一部として位置づけられた.今やMPSでないものは,二次元の静置純培養のみである.多様な産業界からの要請も日増しに高まっている.特に新モダリティーを追究する創薬分野では,ヒト免疫応答を評価に含むことが求めら,例えビトロであってもヒト細胞の使用が望ましいこととなる.とにかく現代は,様々なヒトの生理学的インビトロ系を,研究ばかりでなく広く社会で活用していくためのまたとない契機である.我が国では,2017-2021年のAMEDプロジェクトを通じて4種のMPSプロトタイプが開発された,2022-2026年の第二期では,協力製薬企業との共同で予測系への要求仕様(Context of Use, CoU)の達成に向けて,プロトタイプに改良を施すと共に実施プロトコールを整備,国際標準化を狙おうとしている.多様な臓器構成細胞とMPS技術とをフル活用すれば,原理的にはインビボの応答がインビトロで再現されるはずであるが,どのような組み合わせが生理的機能発現の必要十分条件になるのかが明らかでない.今一度,ビトロとビボの乖離という一見越えがたい壁を打破するための系統的な研究が求められ,これを背景として初めてMPSは各種用途からの要請に応えられる.

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© 2023 日本毒性学会
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