日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S30-1
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シンポジウム30: 生体金属部会シンポジウム 〜金属による生殖毒性〜
重金属によるエストロゲンシグナルかく乱作用
*石田 慶士中西 剛
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抄録

内分泌かく乱化学物質は生殖毒性等の生体影響を及ぼす可能性が懸念されている。現在、エストロゲン作動性化学物質の評価は、子宮肥大試験がin vivoスクリーニング試験としてガイドライン化されているが、子宮肥大試験は子宮重量の変化がエンドポイントであるため、子宮に作用しない化学物質は偽陰性となる可能性がある。このような背景のもと我々は、エストロゲン応答性レポーターマウス(E-Repマウス)を独自に作製し、それを用いてエストロゲンシグナルかく乱作用が疑われている以下の2種類の重金属について検証を行ってきた。

カドミウム(Cd)は米などに多く含まれており、米を主食とする地域ではその慢性曝露による影響が懸念されている。Cdの内分泌かく乱作用については、in vivoおよびin vitroにおいてエストロゲン様作用が報告されており、ヒトにおいてもCd摂取量と乳がん等のエストロゲン依存性がんの罹患率の相関が報告されている。一方、ラットを用いた実験において子宮肥大性は陰性であったとの報告もあり、そのエストロゲン作動性の真偽は未だに不明である。

船底塗料等に使用されてきたトリブチルスズ(TBT)等の有機スズ化合物は、現在は使用規制がなされているが、未だ海底や魚介類から検出されるため魚介類等を介したヒトへの慢性曝露が懸念されている。TBTは、雌性ラットに対して性周期異常や妊娠率低下を誘導することが報告されているが、我々は有機スズ化合物が核内受容体であるPeroxisome proliferator-activated receptor γやRetinoid X receptorを介してエストロゲンシグナルをかく乱し、性周期異常を誘発する可能性を見出した。

本講演では、これら2種類の重金属によるエストロゲンシグナルのかく乱作用についてE-Repマウスを用いた検証結果とともに紹介したい。

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