日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S26-4
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シンポジウム26: フッ素の基礎化学と医薬品開発における現状と展望及び多フッ素化有機化合物の毒性学
ペル及びポリフルオロ化合物(PFAS)の環境曝露によるリスク評価の現状と課題
*広瀬 明彦
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抄録

 ペル及びポリフルオロ化合物(PFAS)は、耐熱性、化学薬品への耐性、低摩擦特性などの特性により、様々な産業で広く使用されている。安定性の高い炭素-フッ素結合とPFAS特有の物理化学的性質により、これらの物質は高い汎用性と耐久性を持つ製品の貴重な成分となり、製造者や消費者に利益をもたらしている。しかし、そのうちPFOSやPFOA等のPFAS類は環境中の残留性、生物濃縮、その毒性の認識が高まってきた。さらに、多くのPFAS類が生態系やヒト、食品中で検出されるようになり、他のPFAS類への懸念も高まってきている。国際的にもストックホルム条約においてPFOS(2010)、PFOA(2019)、PFHxS(2022)が次々に廃絶に向けて合意されており、現在は長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)へと拡大してきている。また、欧州では、2020年以降に飲料水の基準や環境品質の規準値として20種以上のPFAS規制を開始している。さらに、特定のPFAS化合物の規制にとどまらず、数千種とも言われるPFAS全体に対する管理が求められている。これらの大多数のPFAS化合物に対する毒性情報が知られているわけではないので、もっとも研究が進んでいるPFOSやPFOAに対する毒性評価値を基に管理基準等の検討が進められることとなるが、これらのPFOSやPFOAの毒性評価は国際機関の間で数桁以上の違いがあるのが現状である。ここでは、最近の国際機関でのPFOAやPFOSを中心としたPFAS類の基準値関連の規制動向と、PFOA/PFOS類の評価値の導出方法に関する毒性学的な論点について考察するとともに、PFAS化合物の複合曝露による評価手法や、数千種ともいわれるPFAS類を評価するための優先付けの戦略について紹介する。

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