日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-2
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シンポジウム13: 医薬品における雄性生殖を介した発生毒性リスクの考え方
精漿を介した催奇形性発現の可能性
*桑形 麻樹子
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抄録

医薬品では非臨床試験にて催奇形性が危惧される場合、妊婦(妊娠する可能性のある女性)の薬の服用に対して妊婦禁忌としている。一方、男性の避妊の必要性及びその期間に対しては、本来、エビデンスに基づいた規制がされるべきだが、現行では雌動物の結果に基づき、より安全側に立脚した避妊規制をしている。我々は、催奇形性物質であるサリドマイド(THA)を用いて精漿を介した催奇形性発現の可能性について検討した。精漿移行を確認するために、催奇形性量である250 mg/kgのTHAを雄ウサギに経口投与し経時的に血漿および精漿中のTHAおよび2種の水酸化代謝物(ヒト型の5-OH体とげっ歯類型の5'-OH体)を液体クロマトグラフ-質量分析計により測定し、血漿中と同濃度のTHAおよび代謝物が精漿中に存在したことを確認した。この結果をもとに最大精漿移行濃度の100倍量に相当する0.4 mg/kgのTHAを雌ウサギへ連続膣内投与した結果、膣内投与による母および胚・胎児への影響は認められなかった。膣内投与後の母動物血漿および着床位置を加味した子宮内産物(胎盤、卵黄嚢膜、胎児)中のTHAおよび代謝物の濃度を調べた結果、着床位置による影響はなく、膣内投与後7時間まで実測母体血漿中薬物濃度推移は、生物学的薬物動態解析モデルを用いた仮想経口投与後の予測血中濃度推移とほぼ同様であった。この結果から、膣内投与後、全身循環を介して子宮へTHAが到達していると考えられた。膣内投与と経口投与による血漿中THAおよび代謝物濃度の薬物動態を比較した結果、Cmaxは約2500倍、AUC0-tは約5000倍の乖離が確認された。本シンポジウムでは、我々のウサギを用いた一連のサリドマイド研究結果から精漿を介した催奇形性発現の可能性について議論する。

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