日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-111S
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学生ポスター発表賞 応募演題
犬の正常膀胱オルガノイドを用いた新規化学発がんモデルの作製
*長嶌 優子Ting-Wei YU山本 晴臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

化学物質による発がんメカニズムを明らかにすることはがんの予防や治療法の探究に重要である。しかしながら、化学物質の数は膨大であり、それらを従来の長期にわたる発がん性試験で検索することは多大な時間と労力を要することや、近年の動物愛護意識の高まりからも何らかの代替法の開発が望まれている。そこで、生体内の上皮組織構造や遺伝子発現パターンなどを培養ディッシュ上で再現可能な3Dオルガノイド培養法に着目した。当研究室ではこれまでに膀胱がん罹患犬の尿に含まれるがん幹細胞かイヌ膀胱がんオルガノイドの培養法を確立している。さらに、健常犬から非侵襲的に採取した膀胱粘膜細胞からもイヌ正常膀胱オルガノイドの作製に成功している。そこで本研究では、イヌ正常膀胱オルガノイドに膀胱発がん物質(2-Acetylaminofluorene、N-Butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine)をそれぞれ6日間処置したのちに、免疫組織化学染色を用いてがん幹細胞マーカー(CD44)や膀胱がんの早期検出において着目されているDNA損傷マーカー(γ-H2AX)の発現を解析した。また化学物質を処置したオルガノイドを免疫不全マウスに移植することで腫瘍形成能の評価を行ない、新規発がんモデルとしての犬正常膀胱オルガノイドの有用性を検証した。2-AAFを処置した犬正常膀胱オルガノイドでは、CD44およびγ-H2AXの発現亢進が認められ、発がんのイニシエーションが惹起された可能性が示唆された。また、2-AAFを処置した膀胱オルガノイドを免疫不全マウスに移植したところ、移植後2週間で腫瘍の形成が観察された。しかしながら移植後4週で腫瘍の退縮が認められたため、オルガノイドへの化学物質の暴露条件を再検討している。

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