主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
毒物による中枢神経系の傷害では、活性化されたミクログリアがその病態に関与することが知られている。ミクログリアが活性化した際には、その形態が変化すると考えられ、これが毒物の中枢神経系に対する毒性の指標になる可能性がある。そこで、本研究はミクログリアの形態を定量的に評価し神経毒性を検討する方法の確立を試みた。生体における脳全体のミクログリアを効率よく評価できるように、ニューロンやミクログリアに蛍光タンパクを発現させたトランスジェニックゼブラフィッシュの仔魚を用いて、神経毒性がよく知られているエタノールの曝露を行い、二光子レーザー顕微鏡で脳全体のin vivoイメージングを行った。得られた画像をImage Jを用いて解析し、ゼブラフィッシュ脳の特定の領域内に存在するミクログリアの三次元データを取得した。形態の定量評価のために、個々のミクログリアの投影図を得て、Image Jの形態記述子を用いて評価した。その結果、2%エタノールで24時間処理したゼブラフィッシュ仔魚の中脳視蓋におけるミクログリアの真円度や凸度といった指標が、コントロール群に比べて上昇し1.0に近づくことがわかった。真円度は円に近い形状で1.0に近づき、凸度は凹みが少ないほど1.0に近づくことから、エタノールの急性曝露によって、ゼブラフィッシュ視蓋において円形に近く分枝の少ないアメボイド型のミクログリアが増加したことを反映したと考えられた。このことから神経毒性物質によって生じるミクログリアの形態変化を定量的に評価できることが示された。現在複数の神経毒性を有する化合物を用いて同様の手法で検討を行っているので紹介する。