日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-098S
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学生ポスター発表賞 応募演題
化学物質が引き起こすエピジェネティックな修飾変化を定量評価可能な “epi-TK試験”の確立
*山田 治人小田切 瑞基安井 学本間 正充杉山 圭一浦 聖恵佐々 彰
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抄録

DNAメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティックな修飾変化を誘発する化学物質の存在が多く示唆されており、それらの物質の毒性影響をヒト細胞で定量評価可能な試験系の開発が望まれる。そこで本研究ではin vitro遺伝毒性試験法であるTK6遺伝子突然変異試験をプラットフォームとして、TK 遺伝子の発現の有無を指標にDNAメチル化状態の変化を定量評価可能な”epi-TK試験”を確立した。試験株として、CRISPR/dCas9-DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT3A)融合システムを用いて、ヒトリンパ芽球細胞株TK6のTK遺伝子座プロモーター領域へのDNAメチル化によってTK遺伝子発現がエピジェネティックに制御されたmTK6株を樹立した。RT-qPCRによってmTK6における野生株と比較したTK遺伝子発現の著しい低下が観察された。また、バイサルファイトシークエンスによってTK遺伝子のエキソン1上流250 bpの範囲でCpG配列の高度なメチル化が観察された。mTK6株を利用したepi-TK試験の被験物質として、DNAメチル化酵素DNMT阻害剤で作用機序がそれぞれ異なる5-aza-2’-deoxycytidine(5-AZ)、GSK-3484862、RG108の3つについて評価を行った。5-AZ及びGSK-3484862においては、37℃ 24時間処理後に溶媒対象と比較してTK発現復帰頻度がそれぞれ最大で230倍、1900倍まで上昇した。一方でRG108では、24時間または48時間処理後にTK復帰頻度の変化はみられなかった。次に、DNAメチル化亢進作用の可能性が疑われる有機溶媒DMSOをはじめ数種の被験物質について解析を行った結果、TK復帰頻度の低下がみられた。これらの結果から、epi-TK試験はDNAメチル化阻害と亢進の双方向の変化を検出可能な試験法であることが示唆された。

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