日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-074S
会議情報

学生ポスター発表賞 応募演題
DSS大腸炎モデルマウスの短期試験至適条件の探索及びそれに伴う炎症パラメータの変動
*畑中 悠里宇野 絹子白井 陽月柴田 朱衣煙山 紀子美谷島 克宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

炎症性腸疾患(IBD)は主に腸管に慢性炎症を引き起こす疾患であり、その患者数は増加傾向にあるとされる。発症要因として遺伝的素因やその他食事などの環境因子が挙げられるが、原因は明らかではない。原因解明や創薬のために、より早期で安定的な病態を発現するモデル動物の開発が求められる。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルは投与が容易であり、ヒト潰瘍性大腸炎と類似したメカニズムを有していることから広く用いられている。しかし、DSSの濃度や飼育環境によって、発現する病態にばらつきがみられることがある。本研究は、DSSの異なる濃度・投与期間によって発現する病態を評価し、より早期で安定的な条件を検討するとともに、変動するパラメータの解析による病態制御に関与する因子の探索を行った。動物は雄性7週齢のC57BL/6jマウスを用い、通常食を与えた。DSSは1.25%、2.5%、及び5%を飲水投与し、試験期間は3日から2週間とした。試験期間中に、一般状態の悪化を呈する個体は安楽殺を施した。解剖時には大腸を摘出し、遺伝子発現解析及び病理組織学的解析を行った。DSS1.25%及び2.5%試験では、2週間の試験期間中で瀕死個体や死亡個体が呈された一方で、大腸に明らかな病変を示さない個体も観察され、病態にばらつきが見られた。DSS5%試験では、投与3日で炎症パラメータの安定的な上昇が示され、投与7日によって大腸における明らかな炎症像を呈し、安定した病態発現が観察された。TNF alphaやIL1betaは、投与3日で顕著な発現上昇を示し、投与7日では投与3日と比較して減少傾向を示した。一方で、MIP-2やMRP8は投与3日から顕著な発現上昇を示し、投与7日でさらに増強した。以上のことからDSS5%飲水投与が早期から安定した病態発現を誘導し、さらに炎症の増強に関与する因子が見出された。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top