主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
神経伝達物質の放出異常によって引き起こされる中枢神経疾患および化合物の副作用は多くの報告がある。グルタミン酸とGABAの放出は興奮(E)と抑制(I)のバランスを調節しており、E/Iバランスの乱れがてんかんや統合失調症などの病態を引き起こすことが知られている。神経伝達物質の放出と細胞外電位(スパイク)を同時に測定することができれば、電気的活動の変化と神経伝達物質の放出の関係を明らかにすることができ、化合物の副作用評価や病態解明に有効な手段となる。 本研究では、 痙攣現象の重要な因子であるグルタミン酸と過酸化水素(H2O2)の放出を標的として、細胞外電位を同時に測定できる微小電極アレイ(MEA)の開発を目指した。 酵素修飾カーボンナノチューブ(CNT)-MEAを開発した結果、グルタミン酸の検出限界を1nMレベルで検出し、用量依存性を1μMレベルで検出した。H2O2 はnM レベルで正常に検出された。次に、酵素修飾CNT-MEAを用いてマウス急性脳スライスを測定した結果、グルタミン酸放出と細胞外電位、H2O2と細胞外電位を同時に測定することに成功し、薬物投与による神経伝達物質と細胞外電位の変化も検出することが出来た。今回開発したCNT-MEAによる神経伝達物質と細胞外電位の同時測定は、化合物の毒性リスク評価とメカニズム解明を可能にする新しい毒性評価法として応用が期待される。