日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: O2-04
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一般演題 口演 1
加齢に伴う黒質ドパミン神経の脆弱性にはGluR2欠損AMPA受容体活性化を介した細胞外Zn2+流入が関与する
*Atsushi TAKEDASatoko NAKAJIMARyusuke NISHIOHaruna TAMANO
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抄録

本研究では、細胞外Zn2+の細胞内への流入経路としてイオン透過型グルタミン酸受容体のサブタイプであるAMPA受容体に着目し、加齢に伴うパーキンソン病の発症に関与するか検討した。若齢ラットでは黒質細胞内Zn2+レベルを増加させない低濃度AMPA(1 mM)を老齢ラット(70-80週齢)の黒質に投与し、加齢に伴うパーキンソン病の発症にAMPA受容体活性化が関与するかを検討した。若齢ラットの黒質にAMPA(5 mM)を投与すると、回転運動は増加し、ラットパーキンソン病の症状を示した。黒質チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性細胞は減少し、ドパミン神経の変性脱落が認められた。これらは細胞内Zn2+キレーターの同時投与により抑制された。一方、若齢ラットの黒質にNMDA(5 mM)を同様に投与したところ、黒質細胞内Zn2+レベルは有意に増加せず、ドパミン神経の変性脱落も認められなかった。ラットパーキンソン病様症状は黒質AMPA受容体活性化による黒質ドパミン神経細胞内Zn2+恒常性の破綻が関与することが示された。またこの破綻にはZn2+透過型GluR2欠損AMPA受容体活性化によることが示された。次に、老齢ラットへのAMPA黒質投与により、黒質細胞内Zn2+レベルは増加し、アポモルフィン誘発回転運動は増加した。黒質TH陽性細胞は顕著に減少し、ドパミン神経の脱落が観察された。一方で、若齢ラットでは上記症状は認められなかった。また、老齢ラットで認められた一連の症状は、ZnAF-2DA、あるいは細胞外Zn2+キレーターのCaEDTAを同時投与することにより改善された。以上より、黒質GluR2欠損AMPA受容体活性化を介した細胞外Zn2+の過剰流入によるドパミン作動性神経脱落は、加齢により促進されることが示された。

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