日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-1
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シンポジウム2
毒性プロファイリングならびにオン・オフターゲット毒性見極めのための遺伝子改変動物・培養細胞の活用
*藤本 和則渡邉 諒土屋 由美
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抄録

薬理標的に関する毒性学的懸念を洗い出すtarget safety assessmentにおいて、その標的をコードしている遺伝子が改変された動物の表現型情報は非常に有用である。一方、阻害剤に対するオンターゲット毒性をノックアウト動物で予測する際にはそのloss-of-functionのモードに違いがあることには注意が必要である。つまり、一般的にはノックアウト動物でみられる表現型はその標的をコードする遺伝子が胚発生期より不可逆的・恒常的に欠損することで発現しているのに対し、阻害剤でのオンターゲット作用に基づく表現型は個体出生後の特定の期間にその標的と阻害剤との可逆的・時間/濃度依存的な結合によりその活性が低下することで発現しており、この違いは生体の適応反応に影響し、それが最終的な表現型の違いを生じる可能性が示唆される。そのため、当社では薬理標的の妥当性を、遺伝子改変動物の表現型のみで判断することはせず、必ず適切な活性を有する化合物を用いた毒性試験の結果に基づいて判断している。

また、発現した毒性がオンターゲット作用に基づいているのか否かを判断する際にも遺伝子改変動物は有用である。つまり、薬理標的を有していない動物に適切な薬理活性を有する化合物を投与し、その毒性が発現した場合にはオフターゲット作用、発現しない場合にはオンターゲット作用によると判断することができる。一方、遺伝子改変動物作製にはある程度の時間を要するため、このような評価を培養細胞を用いて行うことができれば、より効率的な毒性回避戦略の立案・実施が可能になる。

本発表では、当社のこれまでの遺伝子改変動物・培養細胞の活用事例を共有・議論することで、今後の効率的な新薬開発の参考になることを期待する。

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