日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-1
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シンポジウム11
加齢・炎症に伴う組織の再構築と消化器がんの起源について
*小川 誠司
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抄録

がんは単一の起源となる細胞とその子孫の細胞集団が正常組織の細胞集団の中で陽性選択をうけ、さらには生体の恒常性を逸脱して異常に増殖するにいった一群のクローナルな細胞集団によって生ずる疾患群である。この選択の過程においては、後天的に獲得される「ドライバー変異」とこれらの変異を獲得した細胞を選択する環境が本質的に重要な役割を担っていることが示されており、現在では主要な癌腫の多くについて、ドライバー変異の同定が進んでいる。一方、診断時にはしばしば数千億個に達するがん細胞集団が、その初期にどのようにして発生するのか、それはいつから生ずるのか、また、それが環境やいわゆる発がんリスクによってどのように影響されるのかについては、十分な理解が得られていない。一方、近年、遺伝学的な解析技術の格段の進歩によって、こうしたがんの初期発生の過程におけるクローン選択に関する知見が蓄積されつつある。我々の研究を含むこれらの知見によれば、正常の組織は、しばしば、加齢や環境の影響をうけて、がん細胞と同様の遺伝子変異を有する多数のクローンによって再構築され、発がんの初期関与していることが強く示唆されている。本講演では、喫煙や飲酒に関連した食道扁平上皮がんと慢性炎症に起因する炎症関連大腸がんに着目して、がんの初期発生過程に関する近年の知見を紹介したい。

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