日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-2
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シンポジウム18
臨床での薬剤性腎障害防止における関心の重要性
*古久保 拓
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抄録

 薬剤性腎障害の原因薬は多数知られている.その毒性がどのような機序で発現するのかが研究され,どのような対策で治療もしくは予防可能であるかが検証されていることが重要である.このため,用量設定や使い方の工夫,そして製剤化などによりデメリットを最小限にすることが可能となっている.ヨード造影剤,白金製剤,アミノグリコシド系抗生物質,アムホテリシンBリポソーム化製剤などの使用を考えればそれが理解できるであろう.つまり,毒性に関する「関心」があるため,必要な予防策や迅速な対処がなされやすく,見逃しが少ない.

 一方で,腎障害への関与が直接的に想定しにくい場合には,症例選択時や治療中の対策が取りにくく,腎障害が発生してから関与が浮かび上がることが多い.総合感冒薬による尿閉,炭酸脱水酵素阻害薬による尿路結石の生成,抗ウイルス薬による尿細管閉塞,活性型ビタミンD,降圧薬,利尿薬,NSAIDsなどによる腎前性急性腎障害などである.

 このように,腎障害が関心事である主な薬剤については,必要な対策がとられているが,比較的無関心になりやすい薬剤については,腎障害の発現に関連する複数の原因を見逃してしまいやすい.よって,関心を向けさせるような目印が必要であると考える.

 腎障害を回避して薬物治療を行うには,その一連の適用について「関心」を持っておくことが重要となる.今回は,臨床で遭遇する比較的「無関心さ」が一因となりやすい薬剤性腎障害についてナビゲートしてみたい.

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