日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-63
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ポスターセッション
ラットを用いた麻酔下での採血による血液ガスの評価
*坂口 靖江登内 哲央中島 実千代下澤 美紀森本 清佐藤 伸一
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抄録

【背景】血液ガスの評価は動脈血を無麻酔で採取する必要があるが,ラットでは動脈カニュレーションが必要であり,カテーテルの長期維持が難しいことから反復投与後の評価は難しい.そこで各種麻酔の血液ガスに対する影響を検討するとともに,血液ガスに対する影響が少ない麻酔方法を用いて,血液酸化作用を有するフェニルヒドラジン塩酸塩 (PH) の7日間反復投与による血液ガスに及ぼす影響を評価した.

【方法及び結果】4種の麻酔方法でそれぞれラットを麻酔し,痛覚反射がなくなった時点で速やかに動脈血を採血し血液ガスパラメータ及びヘモグロビン分画を測定した.その結果,3%イソフルラン吸入麻酔では,酸素飽和度 (O2SAT),酸素分圧 (pO2),二酸化炭素分圧 (pCO2) 及びヘモグロビン分画について,カニュレーションによる無麻酔採血と同等の結果が得られた.また,イソフルラン吸入麻酔下の採血で塩酸モルヒネの16 mg/kgの皮下投与によるO2SAT及びpO2の低下,pCO2の上昇を無麻酔採血と同等に評価できることを確認した.PHの30 mg/kgの7日間反復腹腔内投与では,投与1日にヘモグロビン (Hb) の低下及びメトヘモグロビンの上昇が認められたが,O2SAT,pO2,pCO2に変動は認められなかった.投与7日にはHbの低下に加え,pO2及びpCO2の低下が認められた.ラットはチアノーゼ様の皮膚色を呈し不規則呼吸が認められたが,O2SATに明らかな変動は認められなかった.

【結論】イソフルラン吸入麻酔は,ラットの血液ガスの評価に使用できる可能性が示唆された.PHは貧血を誘発したが酸素飽和度に変化が認められなかった.酸素飽和度はヘモグロビンの何%が酸素と結合しているかを表しており全身の酸素含量を反映していないので,貧血が予測される場合は酸素飽和度に加えHbの測定が必要である.

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