日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-171S
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ポスターセッション
SDT fatty ラットにおけるACE2 発現の検討
*宇野 絹子美谷島 克宏石田 ゆりか上地 哲平山口 彩音万代 康平煙山 紀子篠原 雅巳笹瀬 智彦太田 毅中江 大
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抄録

【背景及び目的】SARS-CoV-2は、世界的に感染が蔓延している新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスである。高血圧、脂質異常症や肥満などの基礎疾患は重症化リスクとされ、糖尿病もその一つである。SARS-CoV-2の侵入を介するとされるACE2受容体は、肺胞上皮にも発現し、新型コロナウイルス感染症においてサイトカインストームを引き起こす重要な因子と考えられている。糖尿病患者において、当該感染症の重症化を誘発した要因の一つとして、糖尿病患者におけるACE2発現増加の関与が疑われている。本研究では、糖尿病モデル動物を用いて肺を中心にACE2の発現状況を調べ、重症化リスクモデルとしての可能性を検討した。

【材料及び方法】18週齢から63週齢まで維持飼育した肥満2型糖尿病モデル動物である雄性SDT fattyラットと、対照として雄性SDラットを使用し、普通食を与えた。さらに、Quick Fat (QF)食に2%コレステロール添加した餌を用いた、24週間給餌試験も実施した。解剖時に肺及び腎臓を採材し、病理組織学的解析及び分子生物学的解析を行った。

【結果及び考察】SDT fattyラットは、いずれの週齢でも明らかな糖尿病の病態を示した。同動物の肺では、肺胞マクロファージ浸潤、出血及びACE2陽性細胞の増加傾向が観察された。QF+2%コレステロール食給餌の一部のSDT fattyラットの肺においては、上述の変化がより顕著となった。以上の結果より、糖尿病状態の持続による病態悪化に伴い、肺におけるACE2発現が増加する傾向を示し、これは糖尿病患者において重症化リスクが高まる要因を表す変化である可能性が示された。これより、肥満2型糖尿病モデル動物であるSDT fattyラットは、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクの評価においても有用な動物モデルとなり得る可能性が示唆された。

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