【背景・目的】
化粧品の安全性保証において、光感作性評価は極めて重要である。我々はこれまでに光感作性物質のデータベース(光DB)を作成し、in vitro光感作性評価(光DPRA、光KeratinoSens、光h-CLAT)を検討してきた。一方、動物実験を伴わない化粧品の安全性保証を考えた場合、in silicoによる既存情報の活用も重要となる。本研究では、光DBを用いてread-acrossによる光感作性評価を試みた。
【方法】
目的化合物に対する類似化合物を抽出する既存の化学物質情報としてSciFinder、 PubChem等の情報を網羅した。類似化合物を選別する指標としては、化学構造、ADME、毒性学的アラート/カテゴリー等を選択した。類似化合物の光感作性情報は、光DB、ECHA等の化学物質情報から抽出した。
【結果・考察】
光感作性を示すことがよく知られている6-Methylcoumarin、Chlorpromazineや、我々が検討したin vitro光感作性試験で偽陰性を示すGlibenclamide等をモデル化合物として選択し、化学構造を指標として類似化合物を抽出した結果、各々数千~数万の化合物が抽出された。更に、他の指標を用いて化合物を絞り込んだ結果、毒性学的に極めて類似性の高いと考えられる化合物が選択され、これら類似化合物の光感作性情報を用いてread-acrossを実施したところ、良好な予測結果が得られた。光感作性情報の大部分は、我々が報告した光DBから得られたことから、光感作評価のread-acrossにおいて、本DBの有用性が示された。一方、Carbamazepine等の一部の光感作性物質においては、化学構造を指標とした従来のread-acrossでは光感作性情報は得られなかったことから、化学構造の類似性に加えて遺伝子発現応答の類似性等を考慮したread-acrossの必要性が示唆された。今後、トランスクリプトーム解析の活用を検討していく。