日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-149E
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ポスターセッション
低密度播種培養によるHepG2の高機能化とそのメカニズム
*田中 理恵子相澤 和子磯 まなみ清水 稀惠中村 和昭
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抄録

HepG2細胞はがん研究、毒性試験、代謝試験など幅広い研究分野において汎用されている肝がん由来細胞株である。優れた増殖能を有し、肝細胞として一部の代謝機能を維持しているが、シトクロムP450(CYPs)や胆汁酸トランスポーターの発現、機能は正常なヒト肝細胞と比較して著しく劣る。本研究では、低密度でHepG2を播種した際に見られるClonalな細胞塊においてCYPs等の遺伝子発現が増加している事を見出し、そのメカニズムについて検討を行った。

HepG2細胞を高密度から低密度(4×104, 1×104, 5×103, 2×103/ cm2)となるよう播種し、72時間培養後にシトクロムP450酵素(CYP1A2, 2C9, 3A4)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ALDH)、胆汁酸トランスポーターの遺伝子発現を定量PCRで測定した。主要なCYP分子種であるCYP3A4 についてはP450-Glo Assay Kitを使用し、活性測定を行なった。また、各密度で培養した細胞をPFA固定し、ZO-1蛍光免疫染色によるタイトジャンクション(TJ)形成状態の観察を行なった。TJ形成に関わるタンパク質の発現量は、ウエスタンブロッティングにより定量した。低密度培養によりOccludin及びTricellulinの発現増加が見られた事から、次にこれらの遺伝子をsiRNAによりノックダウンし、その影響を検討した。細胞播種から24時間後にsiRNAをトランスフェクションして48時間培養した後、細胞を回収して遺伝子発現解析、CYP3A4の活性測定、ZO-1とCYP3A4の蛍光免疫染色を行なった。

低密度(2×103 / cm2)で培養したHepG2細胞においてCYPの遺伝子発現が有意に増加し、CYP3A4の活性が上昇した。ZO-1を蛍光免疫染色した結果、低密度培養したHepG2細胞でTJ形成の亢進が見られ、TJの構成タンパク質であるOccludinとTricellulinの発現量が増加した。また、CYPs等の誘導効果はOccludinやTricellulinのノックダウンによってキャンセルされた。本研究の結果は、HepG2における低密度培養がTJ形成の亢進を介して肝特異的機能を向上させる事を示している。

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