日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-147
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ポスターセッション
カニクイザルにおける抗AAV抗体の測定と陽性率に関する検討
*福田 剛司野村 達希中村 隆広角﨑 英志
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抄録

アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus、AAV)は病原性を持たないことから、遺伝子治療への応用が期待される遺伝子導入用ベクターの一つである。近年、AAVベクターを用いた遺伝子治療薬の開発が急増している。ヒト及び非ヒト霊長類(non-human primate、NHP)ではAAVの各血清型(セロタイプ)に対する抗体を保有している場合がある。抗体を有する場合には毒性や薬効に及ぼす影響が懸念されることから、NHPを用いたAAVの一般毒性試験や薬効薬理試験において、抗AAV抗体の有無を事前に調べることは重要である。

本研究では、カニクイザルを用いてAAV2、AAV5、AAV8及びAAV9に対する抗体を測定し、それぞれの陽性率を算出したので報告する。

当社で予備飼育しているカンボジア産カニクイザル50例から血清を採取し、凍結保存した。ルシフェラーゼレポーター遺伝子を組み込んだ各セロタイプのAAVとその血清を混和し、HEK293細胞に添加した。その後37°C、5% CO2条件下で3日間培養した。培養後に発光基質を添加し、発光強度を測定した。陰性対照試料の50%以下の発光強度を示す試料を陽性と判定した。

各セロタイプのAAVに対する抗体を測定した結果、抗体陽性の動物の割合はAAV2、5、8及び9でそれぞれ90%、78%、88%及び62%であった。いずれのセロタイプにおいても抗体陽性動物は高い割合で存在することが示された.このことから、AAVの一般毒性試験や薬効薬理試験において、AAV投与前に抗AAV抗体の有無を確認しておくことは重要であると考えられた。したがって、抗体陰性動物を試験に用いる場合には、多数の予備動物を確保した上で、血中抗AAV抗体レベルを予め調べておく必要がある。

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