主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
痙攣は医薬品開発に多大な影響を及ぼす毒性所見のひとつである。非臨床試験において開発化合物の痙攣誘発ポテンシャルが見出された場合、痙攣に対する適切なバイオマーカーがないことから臨床試験における用量設定は保守的にならざるを得ない。近年、ヒトのてんかん発作を心拍変動解析によって高感度に予測できるという研究が報告された(Fujiwara et. al., IEEE trans. biomed. eng. 2016)。心拍は臨床と非臨床のどちらにおいても非拘束無侵襲で取得できることから、薬物起因性の痙攣を心拍変動解析により予測できれば極めて有用なバイオマーカーとなり得る。そこで本研究ではサルにおける薬物起因性痙攣を心拍変動解析によって予測可能であるかを検討した。4匹のテレメトリー埋植雄性カニクイザルに、痙攣誘発用量付近のpicrotoxin(PTX)及びpenthylentetrazole(PTZ)、並びに痙攣誘発用量の1/10未満で催吐用量のpilocarpine(PILO)を各化合物それぞれ3用量投与し、心電図を24時間連続記録した。化合物投与前の馴化投与日のデータを教師データとし、多変量統計的プロセス管理により各投与後3時間の心拍変動を解析した結果、PTXでは痙攣誘発用量の1/3から、PTZでは1/4から異常検知アラームの発生回数及び持続時間の上昇傾向がみとめられた。一方でPILOでは異常検知アラームの発生回数及び持続時間に変化はみとめられなかった。いずれの化合物においても高用量では投与後頻回の嘔吐がみられたが、PILOの催吐用量でも異常検知アラームの発生回数及び持続時間に変化がみられないことから、嘔吐はアラームの発生に影響を及ぼさないと考えられた。以上より心拍変動解析が薬物誘発性痙攣の予測マーカーとして有用である可能性が示唆された。