日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-47S
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パーソナルケア製品がアトピー性皮膚炎に及ぼす影響の評価
*丹 嵯織本田 晶子宮坂 奈津子田中 満崇田村 紳岡野 人士王 造時長尾 慧上田 佳代高野 裕久
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抄録

【背景と目的】環境中に存在する化学物質や微粒子がアレルギー疾患や病態を悪化させうることが、疫学的にも実験的にも報告されている。化学物質や微粒子は、日常的に使用されるパーソナルケア製品(PCPs)にも含まれることがあるが、これらがアレルギー疾患や病態に及ぼす影響に関する検討は乏しい。そこで本研究では、PCPsがアトピー性皮膚炎に及ぼす影響を評価することを目的とした。

【方法】アトピー性皮膚炎のモデルマウスであるNC/Ngaマウスの耳介腹側にダニ抽出物(Dp)を皮内注射し、皮膚炎病態を形成させた。同時に原液で人の皮膚に塗布することが想定されているPCPを、原液と10倍希釈液の二つの濃度で耳介背部に塗布し、皮膚炎病態の悪化と耳介の腫脹を観察した。対照群には生理食塩水を皮内注射し、希釈用水を塗布した。実験開始20日目に解剖を行い、耳介中の好酸球数、マスト細胞数、総タンパク量、Eotaxin量および血清中総IgE量を測定した。

【結果】対照群およびPCP単独曝露群では皮膚炎病態、耳介の腫脹共にほとんど出現しなかったが、Dp曝露下では双方で影響が認められた。Dp曝露下において、皮膚炎病態では、最終評価日においてPCP10倍希釈液塗布群はDp単独曝露群に比べて有意に悪化し、またPCP原液塗布群では、Dp単独曝露群と比較して早期に病態が形成された。また耳介厚では、Dp単独曝露群と比較してPCP原液塗布群で上昇し、PCP10倍希釈液塗布群で減少した。Dp曝露下PCP塗布群では、Dp単独曝露群に比較し、その他の多くの指標も上昇傾向を示し、炎症の悪化が示唆された。特に好酸球数については、DpとPCP原液の複合曝露群でDp単独曝露群より有意に増加した。

【結論】今回対象としたPCPは、実験的にアトピー性皮膚炎を悪化、もしくは病態の進行を早める可能性が示唆された。 

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