日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-250
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水系暴露濃度予測モデルを用いたヒト用医薬品の河川中濃度の推定
*内野 正小林 憲弘五十嵐 良明
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抄録

【目的】医薬品の環境影響を評価するには、河川中濃度を把握する必要がある。しかし、河川水中の医薬品の測定には膨大な労力を必要とするため、実測により複数の河川および地点における濃度分布や、長期的・平均的な濃度を把握することは非常に困難である。そこで本研究では、既存医薬品2種を例に、水系暴露濃度予測モデルを用いて河川中濃度を予測した結果を実測値と比較し、河川中濃度の予測に影響するパラメータについて検討した。

【方法】医薬品は、国内出荷量が多く、かつ河川からの検出頻度や検出濃度の高いもののうち、解熱鎮痛消炎剤のアセトアミノフェン、消化性潰瘍用剤及び抗うつ薬のスルピリドを対象とした。予測モデルは河川水中のLAS等において精度の良い濃度予測が報告されているAIST-SHANELVer.3.0を用い、対象医薬品の濃度が報告されている20河川50地点の計算を行った。医薬品の全国出荷量を排出量に係るパラメータとして入力し、各県の人口の全国に占める割合に応じて割り振った。また、実測値のない地点も含めた河川中最大濃度を推計し、予測無影響濃度(PNEC)と比較した。

【結果及び考察】スルピリドは各地点での推計値(0-210 ng/L)が実測値(0.4-731 ng/L)の10倍以内の比に収まるものが多かった。一方、アセトアミノフェンは推計値(0-342 ng/L)が実測値(0.3-103 ng/L)の10倍以内の比に収まった地点は半分以下であり、推計値が実測値よりも過大となる傾向が見られた。アセトアミノフェンの推計値が実測値よりも過大となった要因について、入力値等について検討の必要があることが示唆された。スルピリド及びアセトアミノフェンの実測値のない地点も含めた河川中推計最大濃度は、PNECの5%以下と低い値を示した。

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