日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-222
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高速分化技術の神経毒性アッセイへの適用
*矢本 梨恵田中 哲也細谷 俊彦
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抄録

 中枢神経毒性は現在の非臨床試験では予測困難なものが多く、臨床試験における主な開発中止要因の1つとなっている。中枢神経毒性を精度よく検出するためのin vitro神経毒性評価系の開発が求められており、ヒトiPS細胞由来神経細胞の応用への期待が高まっている。これまでに、3Dスフェロイド培養したヒトiPS細胞由来神経細胞を用いて、種々の薬剤に対する応答を細胞質内のカルシウムイオン濃度変化(Ca2+トランジェント)を測定・解析することで、作用機序による薬剤の分類が可能であることが報告されている。一方で、iPS細胞由来神経細胞は提供元や分化誘導方法によって、薬剤応答に差が見られることも報告されており、各iPS細胞由来神経細胞の特性を事前に把握することが、これらの細胞の毒性評価系への応用に重要であると考えられる。

 本研究では、Quick-TissueTM技術を用いて分化誘導を行なったiPS細胞由来神経細胞を3Dスフェロイド培養し、種々の薬剤応答を解析することで、本細胞の特性把握を試みた。Quick-TissueTMとは、転写因子カクテル試薬を用いて1週間程度の短い期間で安価に多能性幹細胞を分化誘導する技術である。薬剤応答の検出はカルシウム感受性蛍光色素を用いたCa2+トランジェント測定により行ない、Ca2+オシレーションの波形解析を実施した。薬剤には、各神経伝達物質受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニストを中心に、てんかん誘発剤、抗てんかん薬などを痙攣毒性に関連する化合物を用いた。その結果、薬剤の添加によりCa2+オシレーションに影響が見られ、in vitro神経毒性評価系への応用の可能性が示された。Quick-TissueTM技術は短期間での分化誘導が可能な技術であり、患者由来iPS細胞を用いた毒性評価や薬効評価を効率的に実施できる可能性を示唆する結果であると考える。

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