日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-46E
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ポスターセッション
STK11/LKB1によるFas誘導性アポトーシス制御機構の解析
*土田 芽衣平田 祐介野口 拓也松沢 厚
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抄録

 セリン・スレオニンキナーゼSTK11/LKB1は、消化管における過誤腫を特徴とするポイツ・ジェガース症候群の原因遺伝子である。STK11は下流キナーゼの制御を介して細胞内エネルギーレベルの調節や細胞増殖の抑制を行い、癌抑制遺伝子として機能することが知られているが、実際に腫瘍を抑制する分子メカニズムについては、これまでよく分かっていない。我々は、キナーゼ関連分子を網羅したsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングにより、細胞死を惹起するデスレセプターの一つであるFasが誘導するアポトーシスを促進する因子としてSTK11を同定し、その腫瘍抑制の分子メカニズムについて解析した。

 STK11の欠損細胞は、Fas依存的なカスパーゼ-8の活性化が減弱し、アポトーシスに耐性を示した。またSTK11欠損細胞に、レトロウイルスを用いてSTK11を安定発現させて再構築すると、実際にFas依存的なカスパーゼ-8の活性化およびアポトーシスが促進された。カスパーゼ-8は、Cullin3ユビキチンリガーゼ複合体によるポリユビキチン化とそれに伴う多機能タンパク質p62を介した凝集体形成によって活性化が増強される。興味深いことに、このFas刺激で誘導されるカスパーゼ-8の凝集体形成がSTK11依存的であることが新たに判明し、STK11はカスパーゼ-8の凝集体形成を促進することでカスパーゼ-8の活性化を増強していることが示唆された。さらに我々は、癌組織で見出されているSTK11 D176N変異体がFas誘導性アポトーシスを促進できないことを確認し、実際にこのSTK11変異体ではFas誘導性のカスパーゼ-8凝集体形成機構が破綻していることを見出した。本研究結果からSTK11は、カスパーゼ-8凝集体の形成促進を介してカスパーゼ-8活性化を増強し、Fas誘導性アポトーシスを亢進させることで抗癌作用を発揮することが判明し、STK11が癌抑制遺伝子として働く分子メカニズムについて初めて明らかとなった。現在、STK11依存的なFas誘導性アポトーシス促進機構の生理的意義を詳細に解析すると共に、実際の癌病態との関連についても検討を行っている。

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