日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-106
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一般演題 ポスター
LC-MS/MSを用いた甲状腺ホルモンの分析及び絶食によるラット血清中チロキシンの影響
*前田 尚之矢部 薫古城 加奈子奥村 佳奈子松浦 正男
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抄録

【目的】経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドラインTG421及びTG422の改定に伴い、甲状腺ホルモンであるチロキシン(T4)の測定が必要となるが、T4の測定は一般に血液内濃度をELISA法やRIA法を用いて行なわれている。近年、組織内の濃度を正確に定量するLC-MS/MSを用いることでより微量成分を測定することが可能となった。そこで我々は、より簡易に測定できる方法を開発すると共に背景データの獲得を目的としてT4濃度を測定した。 
【材料と方法】T4とトリヨードチロニン(T3)及びT3の構造異性体であるリバースT3(rT3)を同時に分析するLC-MS/MS(UPLC-Xevo TQ-S micro、 Waters)を用いた方法を確立し、ラット血清中T3、T4高感度分析法バリデーションを実施した。次に SD系雄ラット15-16週齢から対照群と絶食を16-19時間実施した群(各n=35)を用いて、同時間に同様の手法で採血して得られた血清を用いてLC-MS/MS分析を実施した。
【結果】LC-MS/MSによる分析条件を検討した結果、0.1%ギ酸含有アセトニトリルによるグラジエント分析によりT3とrT3を完全分離するクロマトグラムが得られた。測定時間は2.8分間であった。T4、T3及びrT3の定量下限値は0.5 ng/mLであった。検量線の直線性は得られ、日内日間再現性は評価基準(真度±15%)を満たしていた。溶液内安定性は1年間安定であり、血清中長期安定性(冷凍-80 ºC)は74日間安定であった。対照群のT4の平均値は19.46 ng/mLであり、標準偏差は2.811であった。一方、絶食群の平均値は19.00 ng/mLであり、標準偏差は3.548であった。
【考察】T4、T3の同時分析を短時間で測定することが可能となった。また、抽出も簡易で実施できることから1試料あたりの抽出から測定結果の算出まで、およそ20分であり短時間で評価できた。雄ラットにおける対照群と絶食群では有意な変化は見られなかった。今回得られた結果はOECDTG421及び422での生殖毒性評価における背景データとして有用である。

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