日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-175
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カンボジア産カニクイザル肝臓のチトクロームP450 遺伝子発現解析
*伊勢 良太吉川 剛山下 浩幸宇野 泰広
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抄録

【背景と目的】カニクイザルは、安全性および薬物代謝等の新薬開発の研究に使用されている動物である。実験用カニクイザルの繁殖地として,中国およびカンボジア等のインドシナ半島を含む地域が存在する。しかしながら、これら繁殖地間での遺伝子発現に関する解析は十分ではない。そこで本研究では、薬物代謝に重要なチトクロームP450(CYP)遺伝子の肝臓での発現量を、カンボジアおよび中国で繁殖されたカニクイザルで比較した。CYP1A分子種は、薬物代謝、がん原物質の代謝的活性化等に関与する酵素であり、またCYP3A分子種は、ヒトでは半数以上の医薬品の代謝に関与し、肝臓での発現がCYPの中で最も高く、最も重要な薬物代謝酵素の1つであることから、CYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5遺伝子発現量を解析した。
【方法】カンボジア(雄雌各10匹、3-4歳齢)および中国(雄雌各3匹、5-7歳齢)由来のカニクイザルから肝臓を採材し、total RNAを抽出したのち、リアルタイムRT-PCR法によって各CYP遺伝子発現を定量した。
【結果と考察】カニクイザルCYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5の遺伝子発現量は,カンボジアおよび中国の繁殖地間で有意な差異はなかった。両繁殖地で差異が見られなかった理由は、中国で繁殖されたカニクイザルは、カンボジアを含むインドシナ半島由来であるためと考える。また、カンボジアのカニクイザル肝臓で発現しているCYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5の雌雄差は、それぞれ1.4、1.2および1.1倍であり、何れも有意な差ではなかった。さらに、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な解析で得られた肝臓の遺伝子発現データについても報告する。今後,カンボジアで繁殖管理された個体を用いて試験を行う際、これらの結果を薬物代謝プロファイルを考察する上で活用する。

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© 2011 日本毒性学会
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