日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: W2-2
会議情報

W2 サル類における最近の毒性評価
バイオ医薬品のサル類を用いた評価と代替法の可能性
*渡部 一人櫻井 貴之
著者情報
キーワード: dammy, dammy
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 バイオ応用医薬品の非臨床安全性評価におけるヒト以外の霊長類(NHPs)の利用機会は,ヒト標的分子に対する特異性が優れたヒト 抗体医薬品等の開発が急速に拡大しているために益々増えてきている。毒性試験に汎用される実験動物のうち,遺伝子学的に最もヒト に近いNHPsを用いて安全性評価を行うことの科学的妥当性が高いことは自明であるが,TGN1412治験での事故の教訓からも,安易 にNHPsのみを適切な動物種と規定することが危険なケースも見受けられる。すなわち,バイオ応用医薬品は難病治療の画期的な新薬 として有望視される反面,より注意深くデザインされた非臨床安全性評価の必要性とヒト副作用予測技術の向上が問われてきている。 加えて,限りある資源としてNHPsの有効利用を推進する上で,3Rsの精神を遵守することが重要な課題と認識されている。これらの 背景を踏まえて,ICH S6「バイオ応用医薬品の非臨床評価ガイドライン」の補遺作成における専門家作業部会では,5トピックス(動物 種選択,試験デザイン,生殖発生毒性,免疫原性,がん原性)について議論が交わされた。
 本ワークショップでは,これらの最新の国際動向を踏まえてバイオ応用医薬品の非臨床安全性評価におけるNHPsの利用価値と留意 点,並びに試験の組合せや新たな試験系に関する話題を提供すると共に,機能的な相同タンパク(サロゲート)を用いた代替評価法また はヒト標的分子を有する遺伝子操作動物の利用価値及び解決すべき課題についても提言したい。また,利用可能なNHPsは遺伝子学的 な統御に基づく国際標準化は困難なため,データの精度や再現性の観点から,げっ歯類に比べて安全性評価上に留意すべき点も多い。 これらの問題点を克服するために,マーモセットの国際標準化へ向けた取り組みや遺伝子操作モデルへの発展なども興味深い話題とし て紹介する。

著者関連情報
© 2010 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top