日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: EL-1
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教育講演
オンチップ・セロミクス:チップ上に細胞から臓器機能モデルを作る構成的アプローチ
*安田 賢二
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抄録

細胞内に構築された生化学反応の素過程の連鎖の解明は,たんぱく質1分子の直接観察の発展等によって精力的に推進されている。し かし分子を出発点とした方法論のみでは今のところ細胞と組織・臓器等の応答の違いを説明することは難しい。もし細胞集団等の持つ ルールが理解できれば,将来,ヒトiPS / ES細胞等の幹細胞から分化させた細胞集団を利用してヒト臓器の応答特性を再現できる組織 モデルをチップ上に構成的に構築して計測に利用することが可能となることが期待される。そこで,われわれはマイクロ加工を用いた 空間制御技術を活用することで,細胞集団の空間配置や相互作用を1細胞レベルで制御した構成的アプローチによる細胞集団の研究「オ ンチップ・セロミクス計測技術」を新たに構築し,この構成的な手法によって細胞集団がネットワーク化することで獲得する高次構造 の機能特性の解明を進めている。この手法は,たとえば細胞培養中であっても,自在に追加工によって細胞培養をする容器の微細形状 を変えることができるソフトマテリアルの微細加工技術を用いて細胞集団のサイズあるいは空間配置(パターン)を段階的に変化させ, それによって引き起こされる機能変化を比較することで集団効果を見出す空間制御と1細胞計測を組み合わせた解析法である。細胞集 団(ネットワーク)の解析で得られる情報は,情報を平均化させたゲノム・プロテオーム研究と,個体レベルの解析の間を補完する重要 な観点となると考えられる。本会では,細胞集団の機能の同期化のメカニズムや,刷り込んだ情報の消失までのダイナミクス計測など, 今まで明らかにしてきた心筋細胞ネットワークや神経細胞ネットワーク等の構成的モデルの「集団効果」の例をいくつか紹介させていた だくと共に,「分子生物学的観点」と相補的な「細胞集団による機能解析の観点」から毒性検査技術,創薬技術の開発への展開の可能性に ついても議論したい。

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© 2010 日本毒性学会
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