2009年6月にICH M3(R2)「医薬品の臨床試験及び販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施時期についてのガイドライン」が
Step4に達したことにより,医薬品の代謝物の安全性評価に対する関心が高まっている。
このICHガイドラインに従うと,ヒトで検出された代謝物のうち,代謝物生成の種差によりそれまでに実施された非臨床安全性試験で
はヒトの安全性が量的な面で担保できていないと判断された代謝物に関しては,その標品を用いた安全性評価の実施が推奨されている。
一方,活性代謝物,反応性代謝物及びヒト特異的代謝物と判断された代謝物に関しては,その質及び量的な面を考慮し安全性試験実施
の有無を判断する必要が生じる。Phase 2までの臨床試験を通じて安全性試験が必要と判断されたヒト代謝物については,その評価を
Phase 3試験開始までに実施すべきと記載されており,医薬品の開発期間に対する影響を考えると,あらかじめ予想されるヒト代謝物
については早期に安全性評価に着手することが望ましい場合も想定される。
そこで,製薬協では,in vitro 試験でのヒト代謝物推定から始まる安全性評価において,in silico の活用,遺伝毒性からがん原性試験
に至る種々の安全性試験の実施時期,網羅的な代謝物の検討,定量法,暴露量の評価,定量用標準品の保証などの取り組みについて,
製薬協医薬品評価委員会の加盟企業を対象にアンケート調査を計画した。その結果を集約するとともに,さらに医薬品開発における代
謝物の安全性評価の効率的な進め方について提言したい。
本シンポジウムでの議論が,代謝物の安全性評価について,科学的及び規制的観点から迅速な医薬品創生に資することを期待したい。