日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: CS2-1
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子ども・胎児の薬剤性腎障害の基礎と臨床
胎児期のACEI/ARB暴露による胎児腎症の臨床と病態生理
*関根 孝司五十嵐 隆
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抄録

ヒト胎児期(特に妊娠後期)に母体にアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)あるいはアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が投与されると、胎児が子宮内発育不全を呈し、出生後に腎不全を発症することがあることが知られている。この病態はACEI/ARB fetopahtyと呼ばれ、同様の腎毒性は実験動物でも証明されている。ACEIおよびARBともに最終的にはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAS系)の腎への作用阻害がその薬理作用であり、ACEI/ARB fetopahtyはRAS系の作用が胎児腎の発達に不可欠であることの示している。新生児ラット(ヒト胎児期に相当)へのACEIあるいはARBを投与実験では腎髄質(腎乳頭)の発育不全などが明らかにされている。これまでヒトACEI/ARB fetopathy症例のほとんど新生児期に末期腎不全に至り、その後は透析治療に移行するため病態の詳細な解析はされてこなかった。私達は新生児期の腎不全から回復したACEI/ARB fetopathyの症例を経験し、その腎機能検査をおこなうことにより病態の基礎の一つがNa喪失性の尿崩症であることを見いだした。これはラット腎での髄質の発達不全と合致する結果である。本講演ではACEI/ARBの胎児腎に対する作用と、その結果としての腎症について示し、さらに胎児腎においてRAS系が果たしている作用について考察する。

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© 2008 日本毒性学会
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