日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-089
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薬物代謝
ベンゾジアゼピン系薬物のCYP3A4による代謝的活性化
*水野 克彦加藤 美紀中島 美紀横井  毅
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抄録

【目的】薬物誘導性肝障害の発症メカニズムとして、チトクロムP450 (CYP) 3A4による代謝的活性化反応、すなわち反応性代謝物の生成が挙げられる。ベンゾジアゼピン系薬物の多くは肝障害を惹起するが、そのメカニズムは解明されていない。本研究では、13種類のベンゾジアゼピン系薬物のCYP3A4による代謝的活性化を明らかにすることを目的とした。
【方法】ヒト肝癌由来HepG2細胞をベンゾジアゼピン系薬物とバキュロ発現系CYP酵素を含む培養液でインキュベートし、ATP産生量およびミトコンドリア内脱水酸化酵素活性を指標として細胞生存率を測定した。またLC-MS/MSを用いて反応性代謝物と還元型グルタチオン (GSH) の抱合体の検出を試みた。
【結果および考察】7位にニトロ基を有するフルニトラゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパムによりCYP3A4存在下でHepG2細胞の生存率が顕著に低下した。CYP2C9やCYP2C19存在下では細胞生存率の変動は認められなかったため、CYP3A4による特異的な代謝的活性化であることが示唆された。その他の被験薬は、CYP3A4による細胞生存率の変動が認められず、7位にニトロ基を有していなかった。よって、本研究で使用したベンゾジアゼピン系薬物においては、7位以外の側鎖や基本骨格の7員環の構造はCYP3A4による代謝的活性化と関係しないと考えられる。また、フルニトラゼパムとニメタゼパムはCYP3A4およびGSHとインキュベートすることによりグルタチオン抱合体が検出された。また、CYP3A4存在下でフルニトラゼパムは7位にグルタチオン抱合を受ける反応性代謝物を生成することが示された。以上、7位にニトロ基を有するベンゾジアゼピン系薬物による肝障害は、CYP3A4による代謝的活性化が一因である可能性が示された。

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© 2008 日本毒性学会
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