日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-120
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環境毒性、リスクアセスメント
中期肝発がん性試験法(伊東法)による遺伝毒性発がん物質2-Nitropropane(2-NP)の低用量域における発がん性の検討
*今井 則夫古川 文夫萩原 昭裕土井 悠子深町 勝巳大塚 雅則津田 洋幸
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抄録

【目的】一般に遺伝毒性発がん物質には閾値が存在しないと考えられていたが、近年閾値の存在を示唆する報告が蓄積しつつある。今回、伊東法を用いて、化学合成の中間体として使用され、ラットにおいて肝発がん性が報告されている2-NP(IARC分類2B)の低用量域における肝発がん性について検討した。【方法】6週齢のF344系雄ラットを用いて、実験開始時にN-nitrosodiethylamineを200 mg/kgの用量で1回腹腔内投与による肝発がんイニシエーション処置を行い、その2週間後から、2-NPを0、0.625、1.25、2.5、5、10および20 mg/kgの投与量で1日1回、6回/週の頻度で6週間強制経口投与した。また実験開始3週には部分肝切除術を施し、第8週終了時に屠殺解剖し、肝臓の胎盤型glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣(直径30、50、100および200μm以上)の個数および面積を定量的に測定した。【結果】直径200μm以上のGST-P陽性細胞巣の個数(No./cm2)および面積(mm2/cm2)はそれぞれ、対照群, 3.5, 0.28: 0.625 mg/kg投与群, 3.9, 0.36: 1.25 mg/kg投与群, 3.3, 0.26: 2.5 mg/kg投与群, 3.5, 0.26: 5 mg/kg投与群, 4.6, 0.37: 10 mg/kg投与群, 5.0, 0.42: 20 mg/kg投与群, 7.1, 0.57: であった。0.625 mg/kgから2.5 mg/kg投与群までは個数および面積ともに対照群と比較して有意な差は認められなかったが、5 mg/kg投与群では個数が、10および20 mg/kg投与群では個数および面積が対照群と比較して有意な高値を示した。【結論】GST-P陽性細胞巣の発生に対する無作用量は2.5 mg/kgであることが明らかとなり、2-NPの肝発がん性には実質的な閾値が存在すると推察された。(本研究は、経済産業省の石油精製物質適正評価調査事業の一環として実施した。)

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© 2007 日本毒性学会
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